米EMCは、基幹業務向けのSANストレージといった製品群に加えて、スケールアウト型で利用できるファイルストレージやオブジェクトストレージなど、新しい分野でより成長しているストレージ製品群を提供している。ITproは、こうした新しい製品群を担当している同社の新興技術部門でヘルスケア&ライフサイエンスCTOを務めるSanjay Joshi氏にストレージ製品のロードマップとビジョンを聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ライター)

新興技術部門が扱うストレージ製品の位置付けは。

写真●米EMC、ヘルスケア&ライフサイエンスCTO、Sanjay Joshi氏
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 ストレージが扱うデータは、ブロック/ファイルからオブジェクトまで幅広い。これらは性格が異なっており、両極端だ。ファイルを扱うストレージは高性能や低遅延を目指す。一方でオブジェクトを扱うストレージは、増設によって性能や容量がスケールすることを目指す。米EMCの新興技術部門が扱うストレージ製品群は、こうしたファイルからオブジェクトまでを一貫して扱えるようにする。

 中心にある考え方は、データレイクだ。これは、非構造化データから構造化データまで、あらゆるデータを集約して格納するプールだ。このデータプールに対して、ブロック、ファイル、オブジェクト、Hadoopなど、マルチプロトコルでアクセスできるようにする。また、エッジ(遠隔拠点や支店)のデータプール、コア(本社データセンター)のデータプール、クラウドのデータプールを階層化して運用できるようにする。

 具体的な新興製品群として、「DSSD」、「Isilon」、「ECS Appliance」、「Project Caspian」という、大きく四つのストレージ関連製品を扱っている。現在はまだ実現できていないが、これら複数の異なるストレージ製品を統合して、一つのデータプールとして使えるようにもしていく予定だ。

それぞれの製品の概要やロードマップは。

 高性能で低遅延のストレージとして提供するのがDSSDだ(関連記事:最大1000万IOPS、高速ストレージの新鋭「EMC DSSD」が登場 )。最大1000万I/O毎秒、100Gバイト毎秒のスループット、平均100マイクロ秒のレイテンシー(遅延時間)をうたっている。DSSDは米サン・マイクロシステムズ創業メンバーのアンディ・ベクトルシャイム氏が作った会社で、米EMCが買収した。

 一言で言えば、ラックスケールのフラッシュストレージだ。PCI Express(PCIe)接続のフラッシュストレージの一つであるNVM Express(NVMe)のSSDモジュールを複数台のサーバーから共有できるようにした外部ストレージ装置だ。サーバーからはPCIeカードとPCIeケーブルを介して接続する。外部接続の共有ストレージでありながらPCIeカード型のサーバー内蔵フラッシュストレージと同等の低遅延を実現する。

 サーバーからは、デバイスドライバーを介したブロックアクセスのほか、アプリケーションに組み込むC言語ライブラリー(Libflood)による高速なAPIアクセス、HDFSプラグインによるアクセス、という三つの方法でアクセスする。Cライブラリーを介したアクセスは、OSスタックの重いソフトウエア処理を回避できるので、レイテンシーを低減できる。多くのユーザーがこれを望んでいる。

データレイクの中核はIsilonか。

 Isilonは、データレイクを作るために適したインフラ製品だ(関連記事:スケールアウトNAS「Isilon」に仮想版、階層化はクラウドストレージに対応)。性能が高く、増設によって性能と容量をスケールさせることができる。データを集めて格納し、様々なプロトコルでアクセスできる。ティアリング(ストレージ階層化)の機能も持つ。

 企業の多くは遠隔拠点を抱えている。これら遠隔拠点は、10Tバイトから15Tバイトほどの小さなデータプールを持っている。IoT(モノのインターネット)データを集めている場合もある。拠点で集めたデータを本社のデータセンターに統合したり、クラウド上のデータプールと統合したりといった需要がある。

 こうした需要の下、VMware環境で動作する仮想アプライアンス型のIsilonストレージである「IsilonSD Edge」を用意した。中小規模の遠隔拠点において、ハードウエアアプライアンスよりも安価にIsilonストレージを導入できる。さらに、Isilonが備える階層化機能「SmartPools」を拡張し、オブジェクトストレージを階層に組み込む機能「Isilon CloudPools」を実現した。あらかじめ定義した自動階層化のポリシーに合わせ、例えば1年間更新がなくアクセスもないファイルをオブジェクトストレージに退避できる。

 オブジェクトストレージとして、米AWS(アマゾンウェブサービス)、米Virtustream、Microsoft Azureといったクラウドストレージと、オンプレミス向けには後述する米EMCの「Elastic Cloud Storage Appliance」(ECS Appliance)を利用できる。今後は、動作環境のサーバー仮想化ソフトを増やすとともに、接続先のクラウドストレージとしてOpenStack Swiftを使えるようにする予定だ。

ECS Applianceの位置付けは。Project Caspianとは何か。

 ECS Applianceは、クラウドストレージと同様のオブジェクトストレージとして位置づけている(関連記事:汎用PCベースで価格を抑えたストレージ「EMC ECS」がNFSアクセス可能に)。分散型ストレージソフトの機能を要素技術として利用しつつ、さらにこの上でマルチプロトコル(オブジェクト/ファイル/HDFS)でアクセスできるようにしている。TCO(総所有コスト)を大きく下げられるので、IoTデータの格納や、階層化におけるコールドデータのアーカイブ用途に使える。

 Project Caspianは、米EMC版のOpenStackインフラ基盤だ。Swift、Cinder、ManilaなどのOpenStackのストレージ部分部を使うとともに、HDFSや分散ブロックストレージのScaleIO、オブジェクトストレージのECSなども含めて、ハードウエアと一緒にユーザーに届ける。