数多くのスタートアップ企業を輩出し続けるシリコンバレーへの注目が、再び集まっている。過去にも数年おきにシリコンバレーへの関心が高まることがあったが、今回特徴的なのは、これまでITとは距離があった企業も動き出したことだ。

 なぜ今、多くの企業がシリコンバレーなのか。スタートアップを企業成長に活かすための秘訣は何か。日本企業のチャンスはどこにあるのか。B2B領域のスタートアップ企業への投資を積極的に進めるベンチャーキャピタルDraper Nexus Venturesでマネージングディレクター 日本共同代表を務める倉林陽氏に聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=日経BPイノベーションICT研究所)


ここ数カ月で、「ビジネスの日米格差」を指摘する識者の話を何度も聞きました。よく言われる話ですが、各国のGDP(国内総生産)をみると、日本はこの20年くらいほぼ横ばい。一方で、米国は同じ期間にGDPを2倍以上に大きく伸ばしているという内容です。この20年と言えば、GoogleやFacebookはじめ米国のネット企業が多数生まれ急成長した期間でもあります。日米のスタートアップ企業のエコシステムの違いもこの差に影響していると思いますが、倉林さんはこの差の原因はどこにあると見ているでしょうか。

倉林 陽氏(写真提供:Draper Nexus Ventures)
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倉林:まずは経営者の違いがあると思います。特に新しい産業を創る優れたスタートアップ企業の経営者が米国には数多く存在し、彼らが産業と企業の新陳代謝を促しています。米国では若くして起業して成功し、スター経営者になる人も数多く存在します。年齢も国籍も関係なく、成果を出す人が報われるシリコンバレーには、世界中からIT分野の優れた専門家が集まっています。日本でも最近でこそ、スタートアップでのキャリアを選ぶ優秀な若手人材が増えてきていますが、米国との差はまだ大きいと思います。

 起業家を支援する投資家市場も発展途上です。消費者向け製品についてはユーザーとしての自身の経験やセンスを元に起業家にアドバイスができる投資家が多いと思いますが、IT産業の根幹を支えるビジネス向け製品となると、その分野での技術的知見があって、顧客の課題を深く理解できないと起業家の支援をするのは難しいと思います。さらに、テクノロジーは常に進化するので、最新の産業領域の専門家になる必要があります。こうしたテクノロジー分野での事業経験、経営経験がある投資家が日本でも増える必要があります。現在B2B分野でも優れたベンチャー企業が日本でも育ってきているので、そうした会社の経営者が、将来ベンチャーキャピタリストになるような時代になれば良いと思っています。

シリコンバレーは大企業の「R&D工場」

 最後に、大企業の経営手法の違いも大きく影響していると思います。米国のIT大企業は、シリコンバレーを大企業の「R&D工場」と捉えています。ベンチャー企業のイグジットの80~90%はM&A(合併と買収)で、急成長企業を買収することで大企業も成長していきます。M&Aによって、市場が求めるスピードで製品を提供し収益を上げられるので、大企業の株主もM&Aを望んでいるのです。よって、大企業には優れたM&Aチームを組成することが重要になり、そのため外部の専門家を採用するケースがほとんどです。

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