米ガートナー リサーチ マネージング バイス プレジデントのジーン・アルバレス氏
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 「デジタル・ビジネスへの移行はすぐに始めるべき。明日から何ができるかを考えることがその第一歩になる」――。

 2016年2月24日に港区品川の東京コンファレンスセンターで開催中の「ガートナー カスタマー 360 サミット 2016」の基調講演で、米ガートナー リサーチ マネージング バイス プレジデントのジーン・アルバレス氏はこう話した。

 基調講演のタイトルは「デジタル・ビジネスの勢いで加速する顧客エンゲージメント」。アルバレス氏はまず、顧客とのエンゲージメントに必要な四つの要素(アクティブ、エモーショナル、ラショナル(合理的な)、エシック(倫理的な))について解説した。

 四つの要素を解説するために、自家用車による配車サービスのUber Technologiesや家事の依頼者と作業者を仲介するTaskRabbit、自宅などの貸し手と短期宿泊者を仲介するairbnb、クラウドファンディングによる資金調達を手がけるKICKSTARTEの事例を引用した。それぞれの要素が各サービスの現場で、どう具現化されているかを紹介している。

 アルバレス氏は、「デジタル・ビジネス」とは「デジタルの世界と物理的な世界の境界をあいまいにすることで、新たなビジネス・デザインを創造すること」と定義する。ここでは(プロセスや情報を含む)ビジネスと人、そして物理的なモノが、同等の実体として互いに交換し通信するという。

 さらにデジタル・ビジネスの進化過程を、2000年までの「Web」、2005年までの「E-Business」、2017年までの「デジタル・マーケティング」、2025年までの「デジタル・ビジネス」そして、2025年以降の「自律型のビジネス」に分類。スマートフォンなどのブラウザから投票できる簡易のアンケートシステムを使い聴衆の意見を集計して、聴衆の考えとガートナーの調査結果をリアルタイムで比較して見せた。

 デジタル・ビジネスの理解を深めるために、アルバレス氏は「出張中のビジネスパーソンが、飛行機の遅れに直面したとき」に、次の航空便やレンタカーの予約などをエージェントが先回りするサービスを例示。利用者が問題に直面したときに、その問題を解決できるビジネスチャンスが生まれることを解説した。こうしたサービスを実現するための技術は既にあるとした上で、アルバレス氏は「これらをどうつなぎ合わせて接続するかが課題になる」と指摘した。

 デジタル・ビジネスに至る人のあり方についても示唆した。かつてのIT系人材は、効率化や自動化を重視し、組織のメリットに考えが向いてしまう「デジタルマシニスト」が多かったと指摘。今後は顧客を第一に考え、その生活を快適にすることを優先する「デジタルヒューマニスト」であるべきとした。

 アルバレス氏は、デジタルヒューマニストに必要な要素として3点を整理した。顧客が何を求めているかを見つけてそれを提供する「人を中心に据える」、問題を新しいチャンスとして考えビジネスの機会を生む「セレンディピティ(偶然をきっかけにした気づきや幸運)を受け入れる」、顧客の気持ちに敏感になりプライバシーに配慮する「人々に自由を与える」――である。

 講演の最後にアルバレス氏は「デジタル・ビジネスに移行するには、道が4つある。どの道でもいいがすぐに始めてほしい」と発言。社外のインキュベーターに相談する、ベストプラクティスをレビューするなど手法を例示しながら、来場者自身がデジタル・ビジネスの実現に向かうことの重要性を説いた。

 「デジタル・ビジネスに貢献し、デジタルヒューマニストになるために休んでいる暇はない。明日から何ができるかを考えることが、デジタル・ビジネスを始める第一歩になる」と話を締めくくった。