米アクセンチュアで小売業界を担当しているデイビット・リチャーズ氏が来日した。昨今、マーケティングのデジタル化に注目が集まるなか、小売業界はデジタル化でどう変っていくのか。リチャーズ氏に聞いた。

(聞き手は菅井 光浩=ITproマーケティング)

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小売業界では、デジタルマーケティングの観点でどのような変化が起きているのか。

 小売業界には、ここ数年で3つの波が押し寄せた。1つ目の波は3年前に来た「クロスチャネル化」だ。リアルの店舗とオンラインのECサイト、そしてモバイルの3つのチャネルをシームレスに活用したいと願う顧客が増えたことだ。2つ目の波が約1年半前に来た「在庫の所在の一元管理」。倉庫だけでなく、店舗にある在庫までネットで販売できるようにする流れだ。そして今、第3の波に直面している。顧客が望む複数の販売チャネルをせっかく用意しても、売り上げ向上や需要の喚起に結びつけられていない企業が多い中、そうした状況から脱却しようとする企業が出てきつつある。

店舗の役割や重要性に変化は生じているのか。

 2~3年前、一部の専門家は「リアルの店舗は無くなる。今後はオンラインで全て事足りる」と言っていた。実際は違った。無くなるどころか、重要な役割を担っている。アクセンチュアが実施した購買体験に関する調査では、「店舗での購買体験を求めている顧客」は昨年よりも今年の方が増えていた。その割合は、「オンラインのみの購買体験を求めている顧客」を大きく上回っている。

なぜ店舗への回帰が進んでいるのか。

 実際に商品に触れて試したい、色々な商品を眺めたい、など理由はさまざまだ。配送時間に左右されず、その場で商品が手に入るのも理由の1つだろう。ただし、店舗だけではだめで、デジタルチャネルも最大活用することが重要だ。

理想的な「買い物体験」とはどのようなものか。

 複数の販売チャネルがシームレスに連携して、顧客が便利だと思うエクスペリエンスを提供することだ。米国の大型チェーンデパートであるノードストローム(*)などが、積極的に取り組んでいる。

*編集部注
ノードストロームは、衣服の試着室にiPadを設置して、商品のカラーバリエーションや在庫状況を検索できるサービスなどを提供している。

国内の小売業がシームレスな購買体験を提供できるようにするために必要なことは何か。

 販売チャネルを統括する組織が縦割り構造だと上手くいかない。コストや利益を測るKPI(Key Performance Indicators)を再考する必要がある。チーフ・カスタマ・オフィサー(CCO)を据えるなど、組織のあり方から見直すべきだ。