スマートデバイスはビジネスに革新をもたらす一方で、通信機器としても着実に進化を続けている。これまで企業が使っていた内線電話やモバイルルーターの役割をスマートデバイスが兼ねることで、コスト削減や業務の効率化に寄与している。
スマートデバイスの持つ、通信機器としての役割に注目して活用を進め、コスト削減や業務効率化を実現している企業がある。例えば、スマートフォンを内線電話として利用することだ。すかいらーくやFOXインターナショナル・チャンネルズ、三井倉庫などが実践している。
すかいらーくは2014年3月に本部やエリアマネージャーに配布していた従来型携帯電話、約1000台をiPhoneに更新。老朽化していた本部のPBX(構内電話交換機)の更新と合わせ、外線と内線を統合した。これにより、外出中のエリアマネージャーなどに内線で連絡できるようになった。「iPhoneの導入というよりは、電話システム全体の最適化を図った」(すかいらーく コーポレートサポート本部情報システムグループの椿正玄リーダー)。
仕組みはシンプルだ。電話網と自社のIPPBX(構内交換機)とをつなぐゲートウエイを自社データセンター内に設置。KDDIの内線統合サービス「ビジネスコールダイレクト」を契約しただけだ(図8)。これで、iPhoneから内線へ発着信できる。「全社の内線電話帳はマイクロソフトのグループウエア『Office 365』で管理しており、iPhoneの標準電話帳と同期させている。これで内線電話帳を社員が個別に管理する必要がなくなり便利になった」(椿リーダー)。
FOXは従業員が増えるのを機に、iPhoneを内線として使えるようにした。同社は2013年3月、「FOXスポーツ」というチャンネルの放送開始を機に社員を40人増員した。それまで百数十人の規模だった同社にとって、40人は大増員だ。問題になったのが、IP電話の固定電話機である。同社で利用していた固定電話は1台10万円程度するものだったため、40人分で400万円かかる。社員に配布していた携帯電話の更新時期だったこともあり、一気に電話の刷新に踏み切った。
それまで固定電話と携帯電話の両方を使っていた社員には、(1)携帯電話をiPhoneに変更して固定電話を廃止、(2)固定電話を存続して携帯電話を廃止、のどちらかを選んでもらった。(1)ではソフトバンクテレコムの「Bizダイヤル」というサービスを利用し、固定電話の番号をiPhoneで発着信できるようにした。このサービスでは内線も利用できるため固定電話を廃止しても、業務上の問題はない。こうして余った固定電話を増員した社員に割り当て、追加コストを掛けずに済んだ。
三井倉庫は2011年9月の本社移転を機に、本社ビルへのIP電話の導入とiPhoneによる内線利用を実現。部署の代表番号の固定電話以外の電話機は廃止し、約1200台のiPhoneで内線を受けられるようにした。「内線の統合後、組織変更やオフィスのレイアウト変更が格段に進めやすくなった」(情報システム部の糸居祐二部長)。