2015年7月28日に開催された「ITインフラSummit 2015 夏」の講演のうち、プライベートクラウドの活用事例として東京工科大学の講演を、プライベートクラウド関連のソリューションを提供するベンダーとして、F5ネットワークスの講演および、ネットアップとシスコシステムズの共同講演の合計3本の詳細を報告する。

ユーザー講演:東京工科大学
8000人の開発環境をDocker、データ共有はハイブリッドクラウドで

東京工科大学 コンピュータサイエンス学部教授/メディアセンター長 田胡 和哉 氏

 東京工科大学は2015年4月、8000人の学生が学習に利用するソフトウエア開発環境を配信する目的で、コンテナ型仮想化ソフトのDockerの利用を開始した。講演では、同大学のCIOに相当する田胡和哉氏が登壇し、同社のDocker活用事例の概要を紹介した。

 同大学では、2年前からITシステムのクラウド環境への移行に着手し、2015年1月に完了した。業務系は主にMicrosoft AzureとOffice 365で実現。一方、ソフトウエア開発などに使う教育用のシステムは業務系とは切り離し、Dockerを使った基盤を構築した。

 講演では、Dockerを活用した教育系のクラウド基盤の概要を解説した。このクラウド基盤ではまず、ソフトウエアの開発環境を学生に提供。さらに、出席管理や講義資料の配信が可能なeラーニングシステムや、画像や文書などのコンテンツを共有するCMSも構築した。

 ネットワーク/システム構成は、同大学のコアルーターから10Gビット/秒のネットワークで認証/負荷分散/キャッシュ装置に入り、ここからバックエンドのWebサービス(Java/TomcatまたはRuby/Sinatra)にアクセスする。Webサービスの背後にはDBMS(SQL/NoSQL)がある。

 Dockerの使い方としては、学生1人ひとりに専用のソフトウエア開発環境を配信している。専用のデータベースサーバーやWebアプリケーションサーバーが立ち上がり、Webブラウザ上では開発エディタを含んだアプリケーション開発ツールを利用できる。開発したアプリケーションはボタン1つで本番サービスにデプロイできる。これらの背後でDockerが動いている。

 Docker活用における技術的なポイントとして田胡氏は、コンテナで額面通りのメリットが得られるかを検証すること、コンテナを利用してオンプレミスとパブリッククラウドをつなぎ、コスト削減が図れるかどうかを検証すること、開発環境としてのコンテナはVM(仮想マシン)とどう違うのかを見極めること、などを掲げた。

アクセスは授業中に集中、休日は激減

 まず、額面通りのメリットについては、ほぼ得られているという。コンテナはOS上のプロセスであり、仮想マシンよりも効率がよく無駄がない。このことは実際に、起動と終了が非常に高速で済むというメリットとして表れている。

 ハイブリッド環境でDockerを運用することの背景には、アクセスが授業中に集中するという状況がある。授業が休みになる休日はアクセスが激減し、休校期間はまったくなくなる。このようにアクセス期間が限定されるため、自前でIT資源を持つと無駄になる。

 このため同大学では、コンテナを作成/配信する際のアクセスを中継するサーバー(HTTPプロキシがベース)を構築。ここにアクセスすると、コンテナをどこで実行するのかを都度判断して決める。プライベートクラウド上やA社、B社のパブリッククラウドなどである。こうして、コンテナがどこで動いているかをKVS(キーバリューストア)に格納して管理する。

 コンテナをハイブリッドクラウド環境で利用する際には、データ共有の仕組みがネックとなった。この問題に対しては、ネットワークファイルシステムを常時マウントするのではなく、プッシュ/プル方式を用いてコンテナ立ち上げ時にデータを一気に転送する方式とした。データを常に同期する必要がないため低コストでデータ共有を実現できた。

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