竹中工務店がタブレットを使ったワークスタイル変革に挑んでいる。ウェブカメラも併用し、場所を問わず、どこでも仕事を進められる環境を整えた。タブレットを使いこなす3人衆に密着した。(文中敬称略)

 ドーム球場やアトラクション、高層ホテル、大規模な商業施設が立ち並ぶ東京ドームシティ。その一角に「後楽園ホールビル」がある。その耐震改修工事を手掛けるのが、竹中工務店東京本店作業所工事担当の新濱(にいはま)隆志だ。

 新濱にとって、もはやiPadは業務に欠かせない必須アイテムになっている。メールのチェックはもちろんのこと、設計図面を確認したり、作業の記録を残したりと、用途は多岐にわたる。

事務所と現場の往復が不要に

●後楽園ホールビルの耐震改修工事を担当する新濱隆志氏の業務の流れ
●後楽園ホールビルの耐震改修工事を担当する新濱隆志氏の業務の流れ
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 竹中工務店は2014年4月、約3000台のiPadを本格導入した。同時に様々な業務アプリも用意し、「竹中スマートワーク」と呼ぶ新しい働き方を推進している。このスマートワークで、業務効率を10~15%高めることを狙う。

 新濱はスマートワークの実践者の1人。iPadを使い倒し、建築現場におけるあらゆる仕事の場面で業務効率を高めている。

 新濱のデスクがある事務所と、現在の施工現場である後楽園ホールビルは、徒歩で5分ほどの近い距離にある。新濱は事務所に出勤して荷物を置いて準備を済ませ、iPadを片手に後楽園ホールビルまで歩く日々を続けている。

 後楽園ホールビルに着くとエレベーターに乗って、目的の場所に向かう。ビルの屋上だ。

 こうした1日の始まりに、早速iPadを導入した第1のメリットが表れる。持ち運びやすさだ。iPadを持っていれば、ほとんどの業務は施工現場で済んでしまうため、事務所に戻る手間を省けるようになった。

 新濱のように日々現場に立つ社員にとって、タブレットの持ち運びやすさは極めて大きな導入メリットといえる。いつでも仕事ができる「どこでもオフィス」というメリットに加えて、施工現場では最も重視される「安全第一」の要件を満たすからだ。

 施工現場は足場が不安定なことが多く、エレベーターがないこともしばしばある。iPadは500g程度と軽量なため、手すりにつかまって、足場を上り下りしやすい。

 竹中工務店はタブレットの導入に当たって、大きめのiPad Airと小型のiPad miniのどちらかを、社員が自由に選択できるようにした。miniなら上着の内ポケットにしまうこともできる。

 新濱が選んだのは、大きくて図面が見やすいAir。「現場にはiPadだけ持っていけばいい。不安定な場所でも安全に移動できる」と話す。

 それまでは、設計図や工程表、現場の決まりごとを細かく規定した「設計・施工規準」といった分厚い紙の資料を、必要に応じて持ち歩かなければいけなかった。時には、数kgにもなるファイルを脇に抱え、不安定な足場を歩き回っていた。そうした危険で疲れる状況から解放された。夜間勤務も多い新濱の場合、タブレットなら暗闇でも図面を見やすいという利点まである。

 新濱は後楽園ホールビルの足場を上り、目的の屋上に到着すると早速、iPadで「CheX(チェクロス)」という閲覧ソフトを開き、最新の図面を確認し始めた。その情報を基に、現場で働く協力会社の作業者に対して指示を出していく。

 この場面ではタブレット導入の第2のメリットが発揮される。それが情報のリアルタイム性だ。

 新濱はクラウド上に保管されている最新の図面データをタブレットから確認できるので、冬場の寒い現場でも作業者を待たせることなく、的確なアドバイスを出せる。

 もし図面に記載がないような細かな寸法が急に必要になっても慌てることはない。iPadでCAD(コンピュータによる設計)データも確認できるからだ。これまでは一度事務所に戻り、自席のパソコンでCADデータを開いて確認し、また現場に戻らなければならなかった。

 エレベーターがないころは建物の外壁に設置した足場を上り下りしないと事務所を往復できず、片道で20~30分かかることもあった。その間、作業者は新濱の「指示待ち」となり、目の前の仕事を進められずに作業効率が落ちていた。

 新濱は最新の図面をクラウド上のサーバーから取り出し、iPadで閲覧している。図面の更新があると、そのたびに旧版を削除し、作業者に旧版の図面に基づいて誤った指示を出すリスクを排除している。

 一口に図面といっても、大きく2つある。「参考図」と「承認図」だ。参考図はまだ未確定な箇所が残った図面であり、承認図は建築主から最終承認をもらった図面を指す。

 常に承認図を確認できれば問題はないが、実際にはそうとも限らない。例えば、既存物件の改修現場では「図面にはない配管が見つかった」といった事態が発生し、なかなか図面を固められないケースも少なくない。新濱はiPadに常に最新の参考図を保存しておくことで、指示の精度を極力高めている。

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