業務効率の改善や営業力強化といった永遠の課題に加え、新規事業の創出やビジネスモデル刷新など、CIOの役割は広がってきている。

 そんななか、これからのCIOにはどのような能力が求められるようになるのだろうか。本パートでは、日経情報ストラテジーが開催している「CIO養成講座」「マネジメントリーダー育成コース」の受講生を追跡。学びの場で何を得て、仕事にどう生かしているのかを探り、「ネクストCIO」の条件を考えてみる。

経営にIT業界の手法が効く

 「IT分野で使われる手法は、経営全体に有益」。こう語るのは、日本パレットレンタル(東京・千代田)の加納尚美社長だ。情報システム部門でキャリアを積み、1998年に電算室長、2010年に社長に就任した。

日本パレットレンタルの加納尚美社長は「IT業界で採用されているマネジメント手法は企業経営にも役立つ」と話す
写真撮影:村田 和聡

 同社は消費財などのメーカーが出荷する製品をまとめて載せ、フォークリフトなどで簡単に移動できる「パレット」を、レンタルする事業を全国的に展開している。年間のべ3000万枚のパレットを供給し、消費財メーカーの物流を支える。

 このビジネスモデルを支えるのがITシステムだ。2000年に、各顧客企業へのパレットの貸し出しや回収、さらにパレットの顧客間の移動状況を把握する基幹システムを導入した。2006年には、まだ導入例の少なかったRFID(無線ICタグ)を活用したパレット管理に着手。回収率を高める成果を出している。

 こうした取り組みの中核を担ってきた加納社長は、大規模なプロジェクトに加わったとき、あるベンダーの担当者が極めて巧みにプロジェクトを切り回していることに目を留めた。「どのような手法を使っているのか」と関心を持った。

 それが「プログラムマネジメント」だった。関連する複数のプロジェクトを、並行して管理する手法だ。共通のミッションの下に複数プロジェクトを束ね、相互に調整しながら、ミッションを遂行する。

 日本パレットレンタルの基幹システムは、数百社にも及ぶ取引先と情報を共有する。「各社との取り組みの1つひとつがプロジェクト。全体を束ねてスムーズに進めていく手法が必要だった」と加納社長は話す。

 加納社長はプログラムマネジメントを学べる場を探し、CIO養成講座にたどり着いた。毎月の講座でミッションの落とし込み方や計画の立て方、プログラムの運営の仕方などを身に付けた。2010年の社長就任後は、ITシステムのみならず、経営戦略を事業に落とし込んで実行に結び付ける手法としても、プログラムマネジメントを活用している。

カギは共通言語と仲間づくり

 社内の各部署が担当している仕事などを1つのプロジェクトとみなし、それぞれが経営戦略に掲げたミッションのどれに関連づけられるかを分析。2014年には、20種類に上るプロジェクトを「収益改善」「事業推進」「基盤構築」の3つのプログラムに分けてマネジメントしていった。2015年からは「パレット回収強化」など6つに分け、より高い成果を得ることを目指す。

 プログラムマネジメントを全社的に実施するに当たり、加納社長は2つのことに留意した。それは「共通言語を作る」ことと「IT部門“外”に仲間をつくる」こと。役員や社員に、マネジメントスキル習得を推奨。「CIO養成講座」や、同講座の講師、森岡謙仁氏が新たに立ち上げた「マネジメントリーダー育成コース」の受講を促した。後者は、ITの知識が無い管理職や社員が、CIO養成講座の内容を、分かりやすく学べる講座と位置づけられている。

 これらを受講した1人が経営企画部経営企画グループの石井陽子主任だ。「習得したスキルは、社内プロジェクトをプログラムにまとめる場面などで役立っている」と話す。経営企画部部長と次世代推進部長を兼ねる伊地知真弘営業推進部管掌取締役は、「プロジェクトを具体的な作業に分割して管理するWBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー)の活用が進んでいる」と明かす。

●経営企画部の伊地知真弘取締役(左)と石井陽子主任はプログラムマネジメントを事業革新に応用
●経営企画部の伊地知真弘取締役(左)と石井陽子主任はプログラムマネジメントを事業革新に応用
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 プログラムマネジメントをはじめとする管理手法を社内の共通言語にしたうえで、IT部門の“外”に、共通言語で語る仲間をつくれる。日本パレットレンタルのケースからはこれが、ネクストCIOに求められる素養の1つだといえそうだ。

●ネクストCIOに求められる5つのスキル
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