2016年1月28日に東京・お茶の水で開催された「ITインフラSummit 2016」。インフラ活用の先進企業や、インフラ技術の専門家による多数の講演のうち、本稿ではプライベートクラウドに関するものを中心に紹介しよう。

 まず、特別講演で報告されたキリングループによるプライベートクラウド導入の経緯を紹介。続くソリューション講演では、シュナイダーエレクトリック、ビットアイル・エクイニクスの2社が、プライベートクラウドにかかわる最新のソリューションをそれぞれ解説した。

特別講演:キリンビジネスシステム
OpenStackで基幹インフラ刷新、自動化の徹底でサーバー構築工数が4分の1に

 「ITインフラSummit 2016」の特別講演に、キリンビジネスシステムの門田晴裕氏が登壇。キリングループが2015年から3年越しで進める基幹インフラ移行プロジェクトの経緯と、これまでに得られた効果や知見を紹介した。

 キリングループはサーバー2000台で稼働していた約400のシステムを、順次新インフラに移行中だ。新インフラはOpenStackで構築。2015年中に約100システムの移行が終わっており、2016年から2017年にかけて、さらに大規模な移行を予定する。

キリンビジネスシステム 情報技術統轄部 インフラ技術管理グループ 部長 門田 晴裕 氏(撮影:海老名 進)

 以前からサーバーの仮想化は進めていた同社だが、複数のデータセンターにマシンが分散しており、UNIXや物理サーバーなどの“レガシー環境”も多数残っていたために、開発や運用にかかる人件費が年々増加していた。

 そこで抜本的対策として同社が掲げたのが「革新的なプライベートクラウドの構築」だ。具体的には、(1)サーバー更改に合わせてデータセンターを統一、(2)仮想化をさらに推進、(3)インフラの構築/運用を自動化、の3つの取り組みである。

 コスト削減に直結する自動化には特に注力した。「環境の構築からテストまでを完全自動化すれば作業工数とコストが大幅に削減でき、品質も安定する」(門田氏)からだ。

テストの自動化とUIの簡素化に苦心

 PaaS部分については、ユーザーインタフェースの開発にIBM Cloud Orchestrator(オーケストレーション)を、テストの自動化にはオープンソースソフトのServerspec(テストツール)を採用した。IaaS部分は、簡単な画面操作で仮想マシンを払い出せる環境を作るためOpenStackを採用した。門田氏は「リスクヘッジを考慮し、自動化など諸条件で絞り込んだ結果、現時点ではOpenStackが最適という結論に至った」と話す

 OSやミドルウエアの選定にあたっては、標準技術であることを優先しつつも、「必要以上のリスクを負わないよう、フルオープンソースにすることは避けた」(門田氏)。また、できる限り特定ベンダーへの“ロックイン”を避けたいとの方針もあった。

 テストの自動化にはServerspecが活躍したが、それでもテスト内容の設定には苦労したという。「システムが老朽化しており数も多いので、オペレーションの自動化は必須だった。パラメーターなどもすべて事前に設定し、ツールで自動化した」と振り返る。

 2015年9月から稼働を開始した新インフラの効果について門田氏は「自動化により仮想サーバー構築の申請から利用開始までの工数を75%削減できた」と説明した。さらに構築作業だけに着目すると、10人日から0.5人日と劇的に短縮している。

 同社がプライベートクラウドを選んだのは、「検討時にはプライベートクラウドで構築したほうが1億円ほど安いという試算が出た」(門田氏)からという。パブリッククラウドも選択肢として常に意識しており、新インフラも将来の移行を考慮した構成になっている。将来の「ハイブリッドクラウド」をにらんだ大規模プライベートクラウド構築事例として、老朽化したシステムに悩む企業の参考になりそうだ。

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