スマートフォンの普及は成熟期を迎えつつある。これまでPC向けのWebサイトをデジタルマーケティングの主な舞台と考えていた企業でも、スマートフォンを重要な収益機会として位置付け直し、Webサイトの「モバイル最適化」「モバイル対応」を検討する動きが出てきた。

 これまでは、モバイル最適化をプロジェクトとして捉えたときに、「収益機会」ではなく「コスト」と見るケースが多かった。「利用者が増えてきたから対応する」という、まるでWebブラウザーの新バージョン対応のような、保守的な姿勢でプロジェクトを立ち上げる、といったパターンだ。

 こうした姿勢の背景には「スマートフォンはあくまでもPCの補完として使われる」という前提がある。この場合は、既存のPC向けサイトをベースに制作・運用のコストを下げて対応できるかが成功の要件だ。しかしそれでは、スマートフォンは収益機会増大のツールにはならない。

表示や操作系の変更が「モバイル最適化」ではない

 同じ情報端末ではあるものの、実はスマートフォンとPCでは使われ方が全く異なる。収益機会を増やすには、ユーザー(顧客)が、どんなシーンで何を目的にスマートフォンを使っているのかに注目する必要がある。単にサイトの見栄えを整えてユーザーインタフェースを変えるだけなく、ユーザーの行動を考えて、サイトやサービスの在り方を含めて再設計するのが本当の「最適化」だといえる。

 ビービットは企業のデジタルマーケティングを支援するコンサルティング会社だ。ネット利用者の行動視察を通じてニーズや心理を把握するといった調査も実施している。そうした調査から、筆者はこの1~2年、スマートフォンによって顧客の行動は大きく変わりつつあると感じている。

 この連載では、顧客の行動がどう変わっているのかについて、マーケティング視点で解説する。モバイル最適化における小手先のテクニックではなく、先に述べたような全体を貫く「考え方」を紹介していく。今回は、スマートフォンの普及状況を改めて確認し、第2回以降で紹介する事例の概要を解説する。

ネット利用はスマートフォンが主役に

 スマートフォンはどれくらい普及しているのか。広く公開されたデータを基に、まずはそのあたりを紹介しよう。

 図1は、総務省が公開した「平成26年版情報通信白書」における「情報通信端末の世帯保有率の推移」だ。ここでスマートフォンは白抜きの淡い緑色のひし形で示されている。世帯単位の集計であるため、それぞれの数値が直接、各種機器の台数を反映しているとは言えないものの、ほかの機器との相対的な比較では、スマートフォンは一時的な流行段階から一般に普及した段階になったと言える。

図1●情報通信端末の世帯保有率の推移(出典:総務省「平成26年版情報通信白書」)
※調査データは総務省「平成25年通信利用動向調査」
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 図2は、同じく平成26年版情報通信白書から抜き出した、インターネット接続に使う端末の種類だ。スマートフォンは自宅PCに迫る利用率になっている。図3はニールセンが2015年3月24日に公開したPCとスマートフォンの利用者数の変化。PCは減少傾向から横ばいになった一方で、スマートフォンによるインターネット利用者は、1年半ほどでおよそ1.6倍になっている。

 これらの結果を合わせると、インターネット接続に使われる端末は近い将来スマートフォンがメインになる、あるいは既になっている、と言える。

図2●インターネット利用端末の種類(出典:総務省「平成26年版情報通信白書」)
※調査データは総務省「平成25年通信利用動向調査」
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図3●PCとスマートフォンからのインターネット利用者数推移(ニールセンが2015年3月24日に発表した資料より抜粋)
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