国内の大手キャリアでは、すでにスマートフォン(スマホ)の標準音声通話技術となっている「VoLTE(ボルテ)」ですが、まだ完成形ではありません。今後も、様々な進化が見込まれています。
AMラジオからFMラジオに進化
最大のセールスポイントである音については、より高品質を目指す動きが始まっています。これまでのVoLTEが50~7000Hzの周波数を対象としたAMR-WBというコーデックを使っていたのに対し、新たに「EVS」(Enhanced Voice Services)という方式を追加することで50~14400Hzという、より高音域まで扱えるようになります。
この高音質のVoLTEを「HD+」と呼んでおり、それに対してこれまでのVoLTEは「HD」と呼びます。それぞれの音質をわかりやすくいうと、以前の3Gでの通話が固定電話相当で、HDのVoLTEは「AMラジオ並み」、HD+は「FMラジオ並み」の高音質になります。
HD+のVoLTEを利用するには、新コーデックが扱えるようにキャリアの基地局でソフトウエアを更新する必要があります。もちろん、利用者の端末もHD+対応のものでなければなりません。HD+のVoLTEは、国内ではNTTドコモが2016年6月から提供しており、ソフトバンクも2017年5月から始めています。
5Gの変調方式にも対応
VoLTEを支える変調方式でも進化が期待できそうです。
FDD(Frequency Division Duplex)変調方式のFDD-LTEが主流となっている日本ですが、高速化の流れの中でより効率良く電波を利用できるTDD(Time Division Duplex)変調方式を使ったTD-LTEへの注目度が世界的に高まっています。2020年に開始を予定する5Gでも、TDD方式が主流になる可能性が高いと見られており、VoLTEに関してもTD-LTEへの対応が注目されています。
現時点で日本のVoLTEは、すべてFDD-LTE上で実現されています。TD-LTEを提供している国内キャリアは、すべてデータ通信のためだけに利用しています。
ですが、中国のようなTD-LTEが主流となっている地域では、すでにTD-LTE版のVoLTEは実現されています。TD-LTEとFDD-LTEをまたいでVoLTEを接続することも可能になっています。そのため、近い将来には国内でもTD-LTE版VoLTEが始まる可能性があるでしょう。