「ITインフラSummit 2018」の特別講演に登壇したミサワホームの宮本眞一氏は、同社がグループ全体のIT基盤としてAmazon Web Services(以下、AWS)を導入するに至った経緯、そして5年にわたる活用で見えてきたメリットと課題を解説した。

ミサワホーム 情報システム部長 兼 BR働き方推進室 担当室長 宮本 眞一 氏

 同社は2000年に西暦2000年問題対応でシステムを改修したあと、バブル崩壊の影響を受け、2004年に産業再生機構による支援を受けることになった。さらに、2008年のリーマンショックの影響もあって、約10年間にわたってシステム投資が凍結され、基幹システムの多くが老朽化している状況にあった。

 ようやく業績が回復してきた2011年、同社は新IT戦略を発表。「先の見えない状況に対応するIT」の実現を目指し、クラウドを使ったグループのIT基盤一元化を図ることになった。そこで選んだのがAWSだった。同社は2013年から、顧客管理/営業支援、文書・イメージ管理など、重要な業務システムをAWS上で運用している。

 ただし、AWSの導入にあたっては、「重要なデータを社外に預けてよいのか」「オンプレミスの方が安い」「現状、特に問題がないので、わざわざ移行する理由がない」などなど、社内外からさまざまな抵抗や、不安の声が出たという。

 宮本氏は、こうした声に一つひとつ対応した。たとえば、重要なデータはAWSに預けた方がむしろ安全であること、オンプレミスを継続することで生じるバードウエアの陳腐化や機会損失などについて、繰り返し説明し、社内外を説得したという。

 続いて宮本氏はAWSの課題として「つねに新しいサービスが登場するため、料金体系が複雑化・多様化していること」「"落ちる"ことを前提としたに運用設計が必要なこと」「OSを常に最新バージョンに保つ必要があること」などを挙げた。対応策として、有料サポートの利用と、AWSの導入実績があるシステムインテグレータとの協業が不可欠であると強調した。

レンダリング処理やオープンデータ分析など、"攻め"の活用も

 基幹システムやファイルサーバーなどをAWSに移行した同社は、現在、AWSの新たな活用に着手している。例えば、営業担当者がプレゼン資料として使う「パノラマVIEW」の作成である。部屋の様子を360度リアルに表示できる「パノラマVIEW」を作成するために、従来はパソコンで数時間かけてCADデータのレンダリング処理を実行していた。これをAWSで処理することで、作成時間を3~10分に短縮できたという。

 また、活断層分布や災害履歴といった各種のオープンデータをAWS上で付き合わせて、住宅建設地の調査報告書を作成するサービスも提供している。当初は、顧客に受け入れられるかどうかまったく予想がつかなかったが、始めてみたら非常に好評だったという。宮本氏は「とりあえず試したいことを、小さく始められるのがクラウドのメリット」と述べた。

 「AWSを約5年間使ってきたことで、TCOは30%は削減できた」と宮本氏。ただし、同社にとってのクラウドの"本当の"価値は、「ビジネス部門のスピードについていけること」「施策の試行錯誤につきあえること」「スモールスタートの数をこなせること」であると強調した。

 IT環境の変化によって情報システム部門の役割も変わらざるをえないと述べ、最新テクノロジーの「目利き」と「セキュリティ確保」を自らの役割とし、社内の下請け的な立場を脱却し、ユーザー部門とのパートナーシップを構築することが重要とした。