「クラウド時代のネットワーク最適化Forum 2018」の特別講演に登壇した日本経済新聞社の宍戸俊哉氏は、2017年11月にリニューアルした「日経電子版」で、サイトの高速化と大量アクセス対応のために、CDN(Contents Delivery Network)を導入した経緯とその活用方法を解説した。

日本経済新聞社 デジタル事業BtoCユニット 宍戸 俊哉氏

 2010年に創刊した日経電子版は、有料会員54万人以上、無料会員300万人以上、月間アクセス数3億超という、世界最大規模の経済メディアである。2017年11月のリニューアルでは、サイトの表示を高速化し、突然のアクセス集中にも対応できるようにするため、CDNの導入を検討した。

 CDNは、世界各地に散在するPOPと呼ばれるサーバーにデータをキャッシュし、クライアントの近くにあるキャッシュからデータを配信することで、高速なレスポンスと大量アクセスへの対応を実現するサービスである。

 日経電子版では、上記のようなCDNの基本機能に加え、速報をいち早く配信するための高速なキャッシュクリア、海外からの快適なアクセス、新プロトコルへの対応なども実現するため、CDNサービスとして「Fastly」を選択した。

 Fastlyは、オープンソースのリバースプロキシであるVarnishをベースに開発されたCDNサービスである。その特徴は「十分なPOP数があり、柔軟な設定変更が可能で、APIが充実していること」(宍戸氏)という。

 日経電子版でFacstlyを採用した理由としては、日経新聞社内で既にVarnishの運用実績があったことと、傘下の英Financial Timesで、すでにFastlyが使われていたことが大きかったという。

 新システムはマイクロサービスで構築し、ほぼすべてのリクエストがFastlyを経由する仕組みとなっている。最終的に、Fastlyを利用したシステムのキャッシュヒット率は約90%、ヒットした場合の応答時間100ms以下を実現した。さらに、オリジンサーバー(CDNではないオリジナルのサーバー)のリソースと帯域の削減、サイト高速化と大量アクセスへの対応にも成功した。

常時SSLやIPv6対応、A/Bテスト、セキュリティにも活用

 Fastlyのような「次世代CDN」は、高速化と大量アクセスへの対応以外にも、さまざまな用途に使える付加機能を備えている。リニューアル後の日経電子版では、こうした機能も積極的に活用している。

 新プロトコルへの対応もその1つだ。常時SSL、IPv6、HTTP/など最新のプロトコルに対応するには、通常は証明書の取得や管理、更新といった作業が発生する。しかし、CDNを導入すると「CDN側が新しいプロトコルへの対応を肩代わりしてくれるので、手間なく対応できる」と宍戸氏は述べた。

 また、仮にオリジンサーバーがダウンしたとしても、CDNのサーバーから一定期間、正常反応時のキャッシュを使ってレスポンスを返すことで、エラーの波及を防止する仕組みもある。さらに、アクセスをCDNで振り分けられるので、デザインの異なる記事の効果を測定するA/Bテストの仕組みも容易に構築できる。

 その他にも、ログのモニタリング、リダイレクト設定、アクセス制御などの機能が利用可能で、こうしたCDNの機能を活用することで運用の負荷を減らし、より本質的な業務に集中できるようになったという。

 なお、宍戸氏は本講演のプレゼンテーション資料を、ここで公開している。