「カオスマップからひも解くデジタルマーケティング」は前回、顧客データ管理に関連するプライバシーデータマネジメントを取り上げました。今回は、マーケティングデータの分析や可視化、意思決定を支援する「ビジネスインテリジェンス(BI)」を取り上げます。

BIは、1950年代にIBM社のハンス・ピーター・ルーン氏が提唱し始めたコンセプトだといわれています。IBM研究所の「IBM Journal」のドキュメント(1958年の「A Business Intelligence System」)によると、BIは「目指したゴールのためにアクションをガイドする、既知の事実の相互関係を把握する能力 1」という定義でした。
60年以上前のコンピュータが普及する前から、データを活用してビジネスの意思決定の支援をしようというコンセプトがあったことは大きな驚きです。
データを活用した意思決定の考え方は、近年までは主に会計や生産管理など企業の基幹業務を想定したものが主流でした。それが生活者と企業のデジタル接点が大きく変化したことで、デジタルマーケティングでの活用ニーズが大きくなってきています。まずはその背景を考察します。
デジタルシフトがもたらした顧客データの集積
生活者のデジタルシフトによって、企業と顧客との接点が急激に増加・多様化しています。デジタルシフトとは、企業と顧客とのコミュニケーションをデジタル化する動きのこと。企業が公開するWebサイトはもちろん、デジタル広告やEメール、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)、スマートフォンアプリ、ECサイトなどを使って、歴史上類を見ないほどデジタルを通じたコミュニケーションが活発になっています。
1 原文は“the ability to apprehend the interrelationships of presented facts in such a way as to guide action towards a desired goal”