ABMに取り組もうとしている企業、あるいはABMを実践している企業にその目的を聞くと、「(ターゲット企業からの)売り上げを最大化すること」という答えが返ってくるだろう。ABMとは、狙うべきターゲット企業群を選定し、ターゲットからの売り上げを最大化するためのマーケティング手法である。

ABMのゴールを「参加できた商談の総額」とする
それでは、売り上げを最大化できなければ「ABMは失敗した」ことになるのだろうか。ABM導入後に商談件数が「前年比30%増し」となったものの、商談単価が安い、あるいは成約率が低いといった理由で「売り上げは横ばい」だったケースはどう評価するのか。マーケティング部門では「商談件数が増えた」からABMは成功というだろうし、経営層は「売り上げが横ばい」ならABMの効果が低いと判断するかもしれない。
このときに大切になるのは、「ABMのゴールをどこに設定するか」ということ。今回はABMにおけるゴール、つまり「KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)」をどう設定すべきかについて説明する。
結論から述べてしまうと、筆者はABMでは成約率などをひとまず置いておき、「生成した商談の総額」をKGIにすべきだと考える。金額の中でも「成約した商談の総額」ではなく、「生成した(結果として参加できた)商談の総額」とする。
成約した商談の総額で考えると、商談の成約率が重要な要素となってしまうからだ。しかもその成約率は、製品・サービスの価格や機能の競合優位性、さらには営業部門の手腕などほかの要素に左右される。
ターゲットとなるお客様のニーズやビジネスペインを幅広く把握し、「商談に参加する」ところまでをABMのKGIにするのが良いと考える。
ABM導入初年度は、達成可能なゴール設定を目標に
ただし、ここで大切なことがある。
ABMを導入した初年度のKGIを「根拠のない状態」で設定すると、数字だけが独り歩きしてしまうことだ。例えば「ABMを導入すれば、商談への参加件数を3割増やせるだろう」といった裏付けのない数字を持ち出してはいけない。