ABM(アカウントベースドマーケティング)を実践する際に欠かせない機能が「デマンドセンター」だ。デマンドセンターとは一般的には、「デマンドジェネレーション」(Demand Generation:営業機会の創出)を目的とした組織を指す。
デマンドジェネレーションの機能は、「リードジェネレーション(リードの創出)」、「リードナーチャリング(リードの育成)」、「リードクォリフィケーション(リードの選別)」という三つに分けられる。この三つを実践するデマンドセンターとは、リードを取得し、育てて、営業機会の創出につなげる組織となる。
しかし、これだけでは本当の意味でデマンドセンターの役割を理解しているとはならない。仮に上記の条件を満たす組織をデマンドセンターとするなら、企業は「テレマーケティング部隊」を設置するだけで、デマンドセンターを構築したことになってしまう。
ところが、多くの企業がデマンドセンターの運営に頭を悩めている。テレマーケティング部隊を設置し、その支援のためにMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入したとしても、思うように営業機会を創出できないのだ。
デマンドセンターをどう設計すればいいのか、言い換えれば、「どうやってデマンドセンターの役割を果たす部隊を設置すればいいのか」。今回は、ABMを成功に導くデマンドセンターの設計について説明する。
デマンドセンター設計の「落とし穴」
デマンドセンターの設計に当たって、具体的な施策設計に入る前に「目指すべき目標」と「自社の現状」のギャップを把握することがまず必要となる。ゴール(目指すべき目標)とスタート地点(現状)のギャップを埋めることこそが、デマンドセンターの「役割」であり、デマンドセンター設置の「目的」だからだ。
この全体設計をしっかりしないうちに、「データベース」「MAを中心としたデジタルマーケティング」「イベント出展」「テレマーケティング」など「個別の施策」や、「縦割りの役割分担の組織」を作ってしまう例が後を絶たない。これでは組織が個別の施策にいくら力を入れても、「目指すべき目標」と「現状」のギャップは埋められない。
300社以上のマーケティング組織を見えてきた筆者からすると、「デマンドセンター」がうまく機能している会社は「全体設計」がしっかりできている。逆にうまくいっていない会社は「全体設計」がなかったり、全体設計を進める担当者または組織が不在だったりするケースが非常に多い。
デマンドセンターの役割を示すと以下のようになる。
「目指すべき目標」-「現状」=「デマンドセンターが補充すべき機能」