ABM(アカウントベースドマーケティング)を円滑に進めていくには、マーケティング部門が経営層や営業部門など社内のステークホルダー(関係者)と密な連携を取ることが不可欠である。しかし、密接な連携は容易ではない。それができないことで、ABMがうまく進まないことも多い。今回は「ABMが陥りやすい罠」というテーマで、実際にあった失敗談とそこから得られる教訓をお届けする。

[画像のクリックで拡大表示]

ABMがうまくいかない?!その根本的な原因とは

 「ABMを実践してもうまくいかない」「デマンドセンターが有効に機能しない」という声を耳にすることがある。その組織独自の背景なども考慮すべきだが、最も根本的な原因は、ほぼ一つに集約される。「マーケティング部門と営業部門それぞれのABMに対する理解や役割分担にズレがある」ということだ。

 BtoBマーケティングでは、マーケティング部門とクライアントの間に、ほぼ必ず営業部門が存在する。つまりクライアントがいて、そのクライアントと相対する営業部門があって、その営業部門に見込み客情報(リード)を提供するマーケティング部門があるのが一般的だろう。

 ABMでは、ターゲットとなるアカウントごとに商材やサービスへのニーズの有無を確認するほか、買い換えタイミングを把握するといったアプローチをしていく。こうしたアカウント、つまりクライアントへのアプローチは、営業部門とマーケティング部門のどちらが担当するのだろうか?

 「我が社では、その取り組みはこれまで営業部門がやってきた」というところが圧倒的に多いだろう。こうした企業がABMを実践しようとすると、「これまで営業部門がやっていたことに、マーケティング部門がどう関与するのか」といった疑問が生まれ、誤解が生じやすい。

 結果として営業部門とマーケティング部門で、「自社にとってのABM」に対する理解や認識がズレてしまい、これが様々な問題を生み出てしまう。

ターゲット企業の9割以上にコンタクトがあってもうまくいかない

 さらにもう一つ、営業部門とアカウント部門のズレを生む大きな理由がある。日本のBtoB企業の多くが、マーケティング部門は「プロダクト単位」で、営業部門は「アカウント単位」で展開していることだ。

 具体的に、パソコンやサーバーなどの販売からソリューションまで幅広い事業を展開する大規模IT企業A社の例を取り上げよう。A社は大手ターゲット企業群の90%以上のコンタクト情報を持っていたため、そのコンタクトに向けてABMを実践しようと考えた。しかし思い通りには進まなかったという。

 A社はクライアントとなる企業群をサービス業や製造業、金融など業種ごとに分け、担当部署を設けて、営業部門とマーケティング部門がそれぞれ個別のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)やKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)を設定していた。

 営業部門は、少数の大得意や売り上げの大きい大企業を「エンタープライズ層」と定義し、売上比率が少ない企業群は「SMB層」と分けていた。SMB層の方が企業数もコンタクト数も多いものの、営業担当者の多くをエンタープライズ層に配置していた。

 これに対してマーケティング部門は、プロダクト単位でのアプローチを取っていた。

この先は日経 xTECH Active会員の登録が必要です

日経xTECH Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。