ERP(統合基幹業務システム)は、複数のソフトウエア機能をまとめて提供する「スイート」の時代を終え、「ポストモダンERP」時代を迎えている。ポストモダンERPとは、「全部入り」のスイートをいったん分解し、適材適所でクラウドとオンプレミスを組み合わせて使ったり、場合によってはオールクラウドで使ったりというように、業務機能ごとの臨機応変な使い方を可能とするERP戦略である。ガートナー ジャパンは、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年」1で、ポストモダンERPが「過度な期待」のピーク期にあると見ている。

 一方、AI(人工知能)とRPAへの期待は既にピークを越え、「幻滅期」へと坂を下りつつある。ERP環境でのAIとRPAの活用は、これからこの幻滅期をいかに乗り越えていくかという意味で勝負のときを迎える。企業は導入した後に何らかの壁にぶつかり、試行錯誤が必要になることを覚悟し、根気強い取り組みが必要になることを意識すべきだ。

 RPAについてはだいぶ理解が進んできたが、まだ誤解も見られる。具体的には、「物理的なロボットが作業を代替する」「AIと同じようなインテリジェンスを備える」「とにかくコスト削減に結び付く」といった誤解だ。

図1●RPA導入が得意とする領域
出典:ガートナー
[画像のクリックで拡大表示]

 今はRPAとAIの違いを理解し、それぞれに適した領域があることを把握しておくべきだろう(図1)。RPAが得意とする領域の一つは構造化データを使ったルール・ベースの処理であり、ここでは手作業を置き換える「完全自動化」となる。一方、一部に人間の判断が入る業務におけるRPA適用は、「部分自動化」と呼ばれる。

 AIが貢献できるのは、(1)非構造化データの取り扱いを含む業務の自動化や、(2)手作業に限らないアドホックな判断や意思決定を求められる、さらに広範なプロセスなどである。分かりやすい例としては、画像データをAI OCRで認識し、テキスト変換した上で、RPAがテキストデータを処理する業務が挙げられる(図1の右下)。

 その上、人力では分類しきれない大量のデータから読み取れるインサイト(洞察)に基づく予測や推測のほか、例外的な処理で人間の判断を支援するサジェスチョンなど、人間の能力を拡張する「拡張知能(Augmented Intelligence)」と呼ばれる領域に可能性が見えてきている。中長期的には、ERPをはじめとする業務アプリケーションでも、この拡張知能を活用していくことが重要になるとガートナーは見ている。


1 ハイプ・サイクルは、横軸に「時間の経過」を、縦軸に「市場からの期待度」を置く2次元の波形曲線で表す。新規テクノロジーが市場に受け入れられるまでは、総じて同じ経過をたどる。初めて市場に登場した後に、期待は急上昇するが(黎明期)、成果を伴わないまま過熱気味にもてはやされ(「過度な期待」のピーク期)、熱狂が冷めると市場がいったん停滞し(幻滅期)、改めて実質的な市場浸透が始まり(啓蒙活動期)、成熟したテクノロジーとして市場に認知される(生産性の安定期)というステップを踏む。ハイプ・サイクルは、これら五つの段階で市場の成熟化の過程を示し、各キーワードはそれぞれの成熟度に従い、ハイプ・サイクル上にマッピングされる。

この先は日経 xTECH Active会員の登録が必要です

日経xTECH Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。