営業支援システムの開発プロジェクトで、スマホアプリ開発チームのリーダーにメンバーの信頼も厚い中堅エンジニアF氏を配置した。開発が佳境を迎える中、F氏は終電帰りになる日が増えていた。アプリの開発は何とか進んだが、F氏に負担が集中した。F氏はプロジェクトへの不満を漏らすようになり、チームには暗いムードが漂うようになった。

 チームメンバーが不満分子と化すのは、仕事へのモチベーションが落ちたからだ。モチベーション低下の要因はいくつかあるが、多いのは労働時間の長さだ。「システム開発では優秀なメンバーに仕事が偏りがち。特定のメンバーに負荷が集中していないか、プロジェクトマネジャー(PM)が注視する必要がある。優秀なメンバーは周囲への影響力があるので、不満分子になるとチームが崩壊する」(NTTデータの島村純平第四金融事業本部e-ビジネス事業部課長)。

 優秀なメンバーほど高負荷になるのは、そうしたメンバーが誰よりも早く問題に気付くからだ。例えば外注管理を担当していれば、協力会社の成果物の不備をいち早く見つける。テスト担当であれば、テスト内容の考慮漏れに真っ先に気付く。問題を最も速く是正できるのは気付いた本人。「周囲に言わずに着手している場合がある」(島村課長)。PMの見えないところで、メンバーがWBS(ワークブレイクダウンストラクチャー)に表れないタスクを実施しているのだ。

 こうした状況は「非公式なコミュニケーションを通じて見つけるしかない」(島村課長)。WBSに表れない仕事なので、定例の進捗会議では見えないからだ。島村課長は「チームリーダーやメンバーと毎日一緒に昼食に行くようにしている」という。参加は強制ではなく、行けそうな人と一緒に行くという程度のカジュアルなものだ。負荷が過大になっているメンバーがいるという話を聞いたら、計画の見直しや上位へのエスカレーション、雑用の振り分けといった負荷を軽減する手を打つ。

「命令」は助け合いを阻害

 負荷軽減時には、あるメンバーのタスクを別のメンバーに割り振ることになる。「命令してほかのメンバーに担当させるとやらされ感が強く、割り振られたメンバーのモチベーションを下げてしまう」(オイコスの中村文彦メンター)。

 こうした状況を避けるには、チームの組成段階で進んで助け合いをする空気を醸成する必要がある。「リーダーが命令して役割分担していくと、メンバーは自分に割り振られた仕事しか見なくなる。プロジェクトの目的を示し、役割分担を皆で話し合って決めるようにしたほうがいい」(中村メンター)。

 その上で朝会のような短時間のミーティングの場を持つ。朝会では各メンバーが感じていることを話すようにする。困っている当事者が状況を話したり、別のメンバーが困っていそうだと気付いたことを話したりする。これを起点に負荷軽減策を話し合って決める。