ブリヂストンは、低燃費性と高破壊強度を両立させるゴム複合体を開発したことを発表した(ニュースリリース)。「ダブルネットワーク」と呼ぶ構造をゴム材料に取り入れることで、タイヤの燃費特性に寄与する材料物性の向上と高強度化を両立させることに成功したという。現在、開発したゴム材料を用いたタイヤを試作・評価しており、2020年代前半の実用化を目指す。

 今回の研究開発は、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が推進する革新的研究開発プログラム(ImPACT)「超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現」(以下、プログラム)の一環として、北海道大学、東京大学、京都工芸繊維大学、理化学研究所、九州大学、お茶の水女子大学、名古屋大学、東京工業大学らと共同で実施した。ダブルネットワーク構造は、北海道大学の龔 剣萍(グン チェンピン)教授がタフポリマー化の手法として提唱しており、ゲル材料などで大幅な強靭化効果が実証されていたものの、これまでゴム材料に適用した例はなかったという。

「ダブルネットワーク」構造を取り入れたゴム複合体の概念図と製造プロセス
「ダブルネットワーク」構造を取り入れたゴム複合体の概念図と製造プロセス
(出所:ブリヂストン)
[画像のクリックで拡大表示]
原子間力顕微鏡位相像(左:制御した条件で加工・ネットワーク成分あり、右:制御せずネットワーク成分なし)
原子間力顕微鏡位相像(左:制御した条件で加工・ネットワーク成分あり、右:制御せずネットワーク成分なし)
(出所:ブリヂストン)

 ゴムには、破断・摩耗・引裂きなどのさまざまな強度特性があるが、亀裂の発生とその成長(亀裂進展)を抑制することで、強度特性の向上が可能と考えられている。プログラムでは、ブリヂストンがもつゴム材料に関する技術や知見をもとに、亀裂進展現象についてミクロ・マクロスケールでの実験的解析や理論シミュレーションなどを行い、ゴム材料の高強度化のメカニズムを明らかにするとともに新材料の具現化を進めてきた。今回、ダブルネットワーク構造をゴム材料に取り入れることにより、従来はトレードオフの関係にあったタイヤの燃費特性に寄与する材料物性と耐亀裂進展性を高次で両立することに成功した。これにより、従来の低燃費性を意識したゴム(基準ゴム)に比べて、タイヤの燃費性能に寄与する材料物性(JIS規格 K6394に準拠した損失弾性率と貯蔵弾性率の比:損失正接を指標とする)を15%向上し、亀裂進展に対する強度を約5倍に向上するゴム複合体を実現したという。

ゴムの強度測定方法の概念図。長方形のゴムシートを長手方向につかみ、高さ方向に所定の歪まで伸長して歪を固定する(引裂きエネルギーを与える)。そこで試験片の片側面に初期亀裂を導入し、亀裂の進展速度を高感度ビデオカメラなどで解析する
ゴムの強度測定方法の概念図。長方形のゴムシートを長手方向につかみ、高さ方向に所定の歪まで伸長して歪を固定する(引裂きエネルギーを与える)。そこで試験片の片側面に初期亀裂を導入し、亀裂の進展速度を高感度ビデオカメラなどで解析する
(出所:ブリヂストン)
ゴムの強度測定方法の概念図。図1の試験で与えた引裂きエネルギーにおける亀裂進展速度をプロットすると、ある転移エネルギーで亀裂進展速度が増大する。プログラムではこの転移エネルギーをゴムの強度としている
ゴムの強度測定方法の概念図。図1の試験で与えた引裂きエネルギーにおける亀裂進展速度をプロットすると、ある転移エネルギーで亀裂進展速度が増大する。プログラムではこの転移エネルギーをゴムの強度としている
(出所:ブリヂストン)