寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星「リュウグウ」へのタッチダウン(着陸)に成功した。リュウグウは地球から3億kmのかなたにある、直径が900mぐらいの岩の塊だ。科学技術の進歩はここまで来ている。今や「ものづくり」はできないことがないと思うほどだ。

 一方で、同じものづくりでも自動車製品などのいわゆる量産品(以下、量産品)の品質不具合はなくならない。はやぶさ2の偉業と時を同じくして、SUBARU(スバル)がブレーキランプをつけるスイッチの不具合で国土交通省にリコールを届け出た。リコール台数は30万6728台である。両者の違いを「設計力」の視点で考察したい

 第4回のコラムで、製造業とは「自然を加工する業」であると述べた。自然は理論で動いている。故に、自然を加工する業の取り組みは、理論に沿っていなければならない。このことが「品質不具合の本質」であり、「開発設計の普遍的な課題」だ。すなわち、図面に書かれたことは全て理論で説明でき、かつ試験や実験で理論が間違っていないことを定量的に検証できていなければならない。

 これは、小惑星探査機であろうと、自動車部品であろうと同じだ。科学技術の進歩は、この開発設計の普遍的な課題を少なからず解いてきた。その成果(以下、技術的な知見)をしっかりと取り込むことで、今回の小惑星探査が可能になったとも言える。ところが、量産品は趣を異にする。量産品は、技術的な知見の取り込みが難しいのである。

 仕事柄、量産品の開発設計者と意見交換する機会が多くある。「10年前と比べて、品質不具合は減っていますか」と聞くと、良くなっているという回答はほとんどない。その状況を端的に表しているのが、自動車のリコール件数だ。その件数は毎年200件前後で推移しており、一向に減らない。

 なぜ、量産品の開発設計は技術的な知見の取り込みが難しいのだろうか。

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