本対談シリーズはこれまで、デジタルマーケティングに長年携わってきた上島千鶴氏(Nexal)と熊村剛輔氏(セールスフォース・ドットコム)に、日本のBtoBデジタルマーケティングに関わる最新動向を聞いてきた。
3期目となった本シリーズの第1回は、BtoBデジタルマーケティングに関わる企業に顕在化してきた「ニ極化」を切り口に、企業の取り組み状況を議論している。
――まず、BtoB企業でマーケティングに携わる人が理解しておくべき最新トレンドからお願いします。ユーザー企業を見ていて、最近気づいたことはありますか。
上島:2018年度末にいろいろな会社で耳にした組織再編や人事異動の話をまとめると、ユーザー企業が「二極化」しているという印象を受けました。
一方は、やり直しが多い企業。例えば「マーケティング3カ年計画」などロードマップを作って進めてきた責任者が異動になり、別の部門から新しい責任者がやってきて、一からやり直しになるといったケースです。
もう一方は、着実に成長している企業。前期までの中間成果を基にインサイドセールスやデマンドセンターを本格的に立ち上げる計画を立て、役員会で承認を得て予算を確保するといった動きをしています。
前者は毎年同じことを繰り返しているようなものなので、成果がプロセスとしてつながらず、マーケティング担当が「マーケ施策を実行するだけの部隊」になっています。後者は「新規の顧客を集めるだけがマーケティング担当の役割ではない」という考えを持ち、既存顧客との接点を持つカスタマーサポート(CS)部門を巻き込んだ議論を始めるなど、次のステップに進んでいます。
熊村:確かにこの半年くらいで、二極化した企業間の差が顕著に開いている印象があります。マーケティング組織の再編成を繰り返している企業は、いつまでたってもビジネスの核ができないまま、先行する企業に取り残されている印象を受けます。
進むべき方向が明確に定められていないか、せっかく定めても何らかの事情でブレて「振り出しに戻ってしまった」パターンが多いですね。
上島:こうした会社は結局、「自分たちだけでやっていても先に進まない」となって外部に相談し始めています。地道に取り組んできた会社の「3周遅れ」くらいのところにいるという状況でしょうか。
これまでのデジタルマーケティングは、リードビジネスに先進的に取り組む会社だけが必死に進めていたイメージでした。3~5年ほど前から取り組んでいた会社が最近、事例としてメディアに取り上げられる機会が増えたように思います。これらの記事に触れた一般的な会社が、重い腰を上げてやっと動き出したという感覚があります。
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