本連載では、デジタルマーケティングに長年携わってきた上島千鶴氏(Nexal)と熊村剛輔氏(セールスフォース・ドットコム)に、日本のBtoBデジタルマーケティングの最新動向を語ってもらう。
第2回目の今回は、BtoB企業がマーケティング活動の効果を評価するために、新たな指標が必要になってきた状況を解説。さらにデジタルマーケティングの成熟が、パートナー企業との関係やインサイドセールスの活用にもたらしている現状を基に、その背景を読み解く。
上島さんは最近、日本企業がCMO(最高マーケティング責任者)を設置している割合(CMO設置率)を調査したそうですが、どのような結果だったのでしょう。
上島:情報を公開している国内上場企業3200社の中で、部長クラスのCMOを含む「広義のCMO」の設置率が12.7%で、役員レベルがCMOを務める「狭義のCMO」設置率は7.9%という結果が出ました。
日本企業のCMO設置率は海外に比べると低いですが、それでも増加傾向にはあります。分析用データは、日本マーケティング学会のリサーチプロジェクトCMO研究会 1に提供させていただきました。
熊村:狭義のCMOとは役員待遇のような立場ですか?以前は、外からはCMOと呼ばれてはいるものの、実情は異なるというケースも多く見られます。
上島:はい。過去3年分の人事異動ニュースから「会社として発表された数」を企業単位で調査したので、名ばかりではないはずです。
CMO設置率は定義の違いはあるけれども8~13%くらいということですね。この数字をどのように解釈すればよいですか。
上島:2018年5月末に「国内企業のマーケティング部署設置率」という調査をしたときは11.7%という結果でした。この数字と近いところから見ても、まだそのくらいなのかな、という印象を受けました。
熊村:実は、この数字を私は社内で使っています。営業担当者に対して、「あなたたちが接しているお客様のマーケティング担当は、社内では少数派である可能性が高い」と説明しています。
ここには「マーケティング部署がない企業とビジネスをするには、マーケティングを担当していない人たちにも、しっかりアプローチする方法を考えるべき」というメッセージを込めています。
1中央大学 大学院戦略経営研究科の田中洋教授ほかによる研究論文は2019年内に「マーケティング・ジャーナル」(日本マーケティング学会発行、https://www.j-mac.or.jp/mj/)に掲載される予定である。