「ITインフラSummit 2018夏」の基調講演に、JINSブランドの眼鏡店を展開するジンズでメガネ型ウェアラブル端末の開発に携わる菰田泰生氏が登壇。生体データを扱うウェアラブル端末開発の難しさと、ITインフラ有効活用のポイントについて解説した。

ジンズ JINS MEME事業部技術責任者 菰田泰生氏(撮影:海老名 進)
ジンズ JINS MEME事業部技術責任者 菰田泰生氏(撮影:海老名 進)

 メガネの生産・販売を行っているジンズは、メガネ型のウェアラブル端末「JINS MEME(ジンズミーム)」を開発・販売している。JINS MEMEは、鼻あて部分のセンサーで眼電位の変化を測定して眼球の動きやまばたきを検出、フレーム部分の加速度センサーで頭の動きを検出している。

 このデータを使って提供しているのが、スマホ用アプリだ。現在は、ヒトの集中度を可視化するアプリ、ランニングアプリ、運転中の眠気を検出するアプリの3つを提供している。

 ウェアラブル端末から得られたデータはスマートフォンに送られ、集中度の可視化や歩数表示、眠気のアラート等で即座に活用されるとともに、クラウドにも送られて蓄積され、中長期的な傾向を解析・表示する仕組みとなっている。

 開発における課題の1つは、生体データの特殊性だ。特に眼電位のデータには周期性がなく、ノイズも多い。しかも、データ量が多いため、データ量を落とした処理が重要になるという。

 また、デバイスに搭載できるプロセッサには、演算能力と消費電力のバランスが求められる。プロセッサによっては、眼電位データをマシンラーニングで処理することも可能だが、そうすると消費電力が現行プロセッサの1000倍になるため実現は難しい。

 このように、ウェアラブルの開発は、生体データを扱うこと、およびファームウエアとハードウエアのレイヤーが追加されていることが、通常のシステム開発とは大きく異なると菰田氏は説明した。

不可欠だったサーバレスアークテクチャ

 次に菰田氏は、JINS MEMEを支えるクラウド側の開発について説明した。そこで最も重視されたのが、「追加しやすい」「変更しやすい」「捨てやすい」の3つだ。そして、この3つを満足させる考え方が「マイクロサービス」であり、その実現に寄与したのが、サーバーレスアーキテクチャだった。菰田氏は、サーバーレスアーキテクチャのメリットを次のように述べた。

 「サーバーレスのメリットは、RDBを使わないこと。正確なスケーリング予測が必要なRDBを、当たるか当たらないか分からない新規事業で利用するのは危険だ。そこで、コストと性能をリニアにスケーリングできるサーバーレスアーキテクチャを優先的に適用した」(菰田氏)

 菰田氏は終盤、開発体制にも言及した。当初はほぼすべてが外注だったが、「決めたらすぐに作る」ことが必要だと判断し、徐々に内製化をすすめ、現在では計算ロジックと仕様策定、データフロー、アプリ開発などを内製化している。

 このように、生体データを活用した開発には、一般的なシステム開発とは異なる困難さが伴うが、チャレンジする価値は十分にあるという。菰田氏は「まだ、爆発的に普及しているとは言えないが、これまでデータ化されていなかった生活習慣を可視化することには、計り知れないメリットがあり、今後、着実に普及すると考えている」と述べ、講演を終えた。