「ITインフラSummit 2018夏」のスペシャル対談では、NHKサッカー解説者の山本昌邦氏とデータスタジアムの齋藤浩司氏が、2018 FIFAワールドカップ(ロシアW杯)を題材に、データから見えてくるサッカー界のトレンドを語った。

NHKサッカー解説者 山本 昌邦 氏(撮影:海老名 進)

 ロシアW杯の特徴の1つは、ビデオ映像によって審判を補助する「VAR」(ビデオアシスタントレフェリー)を導入したことである。VARを使えば、得点、PK(ペナルティキック)、一発退場、警告/退場時の選手の取り違えを防ぐことができる。

データスタジアム 執行役員 斉藤 浩司 氏(撮影:海老名 進)

 ロシアW杯では、全20試合中2試合でVARを使った。PK関連の判定は計18回。このうち半数の9回が「PKなし」の判定から「PK」へと変更された。山本氏は「今まで見逃されていたプレイがPKになった。これによって正当な守備をするようになった」と評価する。

 データから見えるロシアW杯の特徴の1つは、高い位置でボールを奪ってから早い攻撃を仕掛ける「ショートカウンター」が減ったことである。相対的に、低い位置でボールを奪って早い攻撃をしかける「ロングカウンター」と、ボールをキープしてつなぎながら遅い攻撃を展開する「ポゼッションスタイル」が増えた。

 注目すべきデータとして齋藤氏が示したのは、「ボールを支配されていたチーム」の勝率が高い、という事実である。ボール支配率が40%以下のチームは、全24試合で9勝8敗7分、決勝トーナメントに限ると6試合で4勝2分と負けなしであった。優勝したフランスのボール支配率は、準決勝(ベルギー戦)でも決勝(クロアチア戦)でも40%を切っている。

 山本氏は、「W杯はプレーの質が高いので、ボールを持ったからと言って簡単には崩せない」と指摘、フランス代表を例に取って守備の重要性を説いた。「フランスは守備がしっかりしているので、決勝トーナメントの7試合で常に先制していた。リードを許したのはアルゼンチン戦の9分間だけだった」(山本氏)。

「ラップトップ監督」がドイツで台頭

 サッカー界におけるデータ活用の進展振りについて齋藤氏は、「ラップトップ監督」と呼ぶ、ITを駆使してデータを活用する新たな監督像について述べた。「ラップトップ監督」はドイツを中心に増え始めており、選手出身ではない人が、早ければ20歳代で監督に就任している。そしてこうした監督が強いチームを作っている。

 山本氏もラップトップ監督に注目しており、「論理的に選手を納得させ、それで勝てれば『監督は凄い』と感心される。『あの監督の言う通りにすると勝てる』という実績によって選手から信頼されるようになる」と評価する。こうした新時代の監督は、選手の心のマネジメントも勉強しているという。

 齋藤氏は、今後のサッカーについて、「ヒトの脳とAI(人工知能)の両方を強化して活用することが大事」と指摘する。ヒトの脳を強化する試みとして、素早いプレーができるように認知判断能力を鍛えるトレーニングがある。

 一方のAIは、予測などに利用できる。将来的は、怪我を予測してトレーニング量を減らすといったことができるようになる。「ある選手が、何年後に、このくらいのレベルになる」といった予測もできるようになるという。