アドビ システムズ日本法人は2017年に、ソフトウエア提供形態を「パッケージ販売モデル」から「サブスクリプションモデル」へ転換しました。主力製品のソフトウエア提供形態を三つのクラウド(Creative、Document、Marketing)に集約したことで、本格的に「売り切り型」から「継続型」へ顧客エンゲージメントスタイルを変革する必要がありました。筆者はこの変革プロジェクトに、チェンジマネジメントリーダーとして関わりました。

その過程で筆者はさまざまな「チェンジモンスター」つまり変革に対する阻害要因に直面し、これを克服してきました。本連載では、2年半にわたる変革プロジェクトの中で筆者が具体的な成果を出すまでの最初の100日を振り返ります。
同じように会社を変革するプロジェクトに携わるリーダーの役に立つよう、可能な範囲で具体的な内容を表現していきます。その第1回は、筆者がプロジェクトを任されてから現状を認識し、チェンジモンスターとの戦いに備えるところまでを描きます。
求められたのは「チェンジマネジメント」
「小沢さん。あの部門を変えたいと思ってるんだけど、やってみない?」――。
2015年7月にサービス部門の総責任者である常務が、当時コンサルティングサービスの本部長を担っていた私に告げた日のことを、私は今でもはっきり覚えています。言葉だけでなくその景色や空気の匂いさえも、まるで写真で切り取ったかのように覚えています。
それほど、この言葉をきっかけにアドビ システムズ(以下「アドビ」)の日本法人で始まった「チェンジマネジメント」の取り組みが、自分のマネジメントという仕事に対する考え方と意識を大きく変えたからです。そしてこの取り組みは私だけでなく、多くの関係者の発言と行動を変えていったのです。
アドビは「Photoshop」や「Illustrator」に代表されるクリエイター向けのソフトウエアやPDFをベースとした文書管理ソフトウエアの「Acrobat」、そして2009年にOmnitureという会社を買収してからデジタルマーケティングのソフトウエアも開発・提供しています。本社は米シリコンバレーにあって、全世界では1万9000人が、日本法人では約440人の社員が働いています。