クラウドサービスベンダーの熱視線が、欧州SAP製品で作ったオンプレミス(自社所有)のシステムに向いている。SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SAP ERP」や業務パッケージ群「SAP BusinessSuite」(以下、両製品を合わせてSAP ERPとする)で構築した基幹系システムを、自社のクラウドサービスに移行させる――。これがベンダー各社の思惑である。SAP ERPは2025年に標準サポートが終了する「2025年問題」が控えているからだ。

 SAP ERPのサポート終了が2025年問題と呼ばれているのは、対応策が単なるバージョンアップでは済まないからだ。SAP ERPのユーザー企業がSAPのERPパッケージを使い続けたい場合、新製品である「S/4HANA」に移行する必要がある。S/4HANAはSAP ERPの後継製品ではあるが、データモデルをシンプル化したり、各モジュールに配置していた機能を組み替えたりするなど、完全な別製品だ。

 加えてS/4HANAの動作データベース(DB)は欧州SAPの「HANA」のみに限られており、多くのSAP ERPユーザーはDB移行が必要になる。HANAはメモリー上で動作するインメモリーDBで、オンプレミス環境で利用する場合には、メモリーを大量に積んだ専用のハードウエアが必須だ。SAPのERPパッケージを使ったシステムの場合、開発機・検証機・本番機と同じ環境を3つ用意することが求められている。オンプレミス環境で汎用的なサーバーでSAP ERPを運用していた企業にとっては、HANA化は大きな投資になる。

 SAP ERPのユーザーは2000社程度あるとみられる。2000社の企業があと7年でERPを新製品に変更し、DBを移行するのは簡単ではない。そのため、ハードウエアの更改などを迎えたタイミングでSAP ERPの動作環境のクラウド化を検討する企業が増えている。

 「まずはオンプレミス環境からクラウドにインフラを移行し、ハードウエアの更改を回避して様子を見ようとする企業が増えている」とSAP製品のクラウド導入を手がけるBeeXの広木太社長は指摘する。「クラウドであればハードウエアの更改がないので、いつのタイミングでも新しいDBやERPを導入できる。加えて、HANA向けの環境を提供しているクラウドサービスも多いので、HANAにも移行しやすい」(広木社長)と考える企業が多いためだ。

 移行の受け皿となるクラウドサービス側についても、「1~2年前まではクラウド移行後に性能が不足するケースがあった。しかし現在は、大規模なインスタンスが登場したことで、性能問題が起こるユーザー企業はほとんどなくなっている」と広木社長は話す。

HANA向けサービスはメモリー20TB超の戦いに

 2025年問題を踏まえつつ、SAP ERPのユーザーの受け皿になろうと大手クラウドベンダーが打ち出す一手が、HANA向けのサービスだ。ユーザー企業にとってHANAが動作するのに十分なメモリー容量のサービスを提供しているかどうかが、SAP ERP向けのインフラとしてカギの1つとなるからだ。

 欧州SAPはオンプレミス環境と同様に、HANAが動作するクラウドサービスを認定している。AWSやMicrosoft Azureといった世界展開するクラウドサービスのほか、インターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJ GIO」や伊藤忠テクノソリューションズの「CUVICmc2」といった国内ベンダーの「基幹系向け」を標ぼうする主要なクラウドでは認定を取得しており、認定だけでは差が出にくい。そこで今、クラウドベンダーが注力しているのが、大容量メモリーが使えるインスタンスの拡充だ。

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