静岡県にユニークなビジネスモデルを展開している中堅企業がある。浜松市に本社を置く中堅企業システックである。同社は顧客企業と定期的なミーティングを開催し、相手の課題・困り事を聞き出し、それに対するソリューション製品を提案する。ソリューション製品は顧客企業と共同で開発し、同製品に付随する新技術に関しては特許を顧客企業と共同で出願する。開発した製品は顧客の合意の下、自社製品として販売する。このビジネスモデルを一言で表現すれば、「完全マーケットイン型コンサルティング製造事業」と呼ぶことができよう。

出来上がった製品は顧客企業の課題・困り事に対するソリューションである。このため製品は顧客企業に必ず販売できる。同製品を顧客企業向けのカスタム品にしてしまえば、開発費や利益を確保するため製品単価が高くなる。そこで製品単価を抑える代わりに、顧客企業から製品を他社に販売する許可を得る。同事業を積極的に推進するシステック代表取締役会長の梶村武志氏は「この事業は完全マーケットイン型のビジネスモデルである。中小企業が下請けから脱却する手段の1つとして、これほどよいビジネスモデルはない」と強調する。

システックは1974年創業の電子機器の製造会社である。従業員数217人(2016年9月)、売上は約26億円(2015年度実績)である。同社は日本電気向けのプリント基板の受託生産からスタートし、受託設計、技術者派遣、OEM、ODMへと業容を拡大させてきた。主力事業の一つである技術者派遣では、技術者の約7割に当たる120人程度が顧客企業で働く。担当業務は回路設計から基板設計、筐体設計、ソフト開発まで幅広い。顧客企業数は十数社で、30人程度技術者を受け入れている企業もある。

同社の一つの特徴は、中堅・中小企業には珍しく、専任の特許部隊を抱えている点である。顧客企業との特許の共同出願では、外部の弁理士事務所を介さずに特許部隊が必要なすべての書類を作成する。そこまで特許にこだわる理由を梶村氏は「特許を持つことで顧客の見方が変わる」と説明する。

同社の技術のベースはASICの設計である。30年くらい前、日本の半導体が全盛期だった時期に大手半導体メーカーからASICの設計業務を多数受注した。その後、日本の製造業の変遷に併せて、通信業界、家電業界、産業機械へと対象業界を拡大させてきた。技術も当初のASICから、FPGAを使った回路・基板設計へとその能力を開発、発展させてきた。同社の特徴は回路基板の企画、設計、試作、量産まで一貫して受注できることである。「企画、設計、試作まで対応できるところは多いが、我々の規模で量産まで対応できるところは極めて少ない」と、PLDソリューション事業部を担当する執行役員の坂田全弘氏は現在の事業に自信を示す。

システックが自社製品を開始するキッカケは1990年代のバブル崩壊だった。その当時、電機メーカーからの受託製造が激減し、梶村氏は下請け事業からどう自立するかを考えていた。そして導き出した一つの結論が自社製品の開発・販売だった。しかしそう簡単に自社製品の開発に成功したわけではない。

「自社製品を開発しようと異業種交流会にも参加した。最初はみんなで試行錯誤を続けるものの、長続きはしなかった」と梶村氏は当時を振り返る。その一方でプロダクトアウト型の自社製品の開発にも注力した。しかし、成功したと言える製品は必ずしも出てこなかった。そんな中、自社製品の開発に道を切り開いたのが、温度によって色が変わる塩化ビニール製マスコット玩具だった。

トヨタ自動車の工場の運営部隊への技術提案を繰り返していた時のことだった。社員が偶然持ち込んだマスコット玩具が担当者の関心を惹いた。自動車工場では配電盤のネジが緩むと発熱し、火災の原因となる恐れがあった。その担当者は、マスコットに使われている塩化ビニール製樹脂を使って配電盤のネジにかぶせるキャップを作れば、配電盤の発熱状況をモニターでき、事故を未然に防止できると考えた。そこから完全マーケットイン型コンサルティング製造事業の最初の製品「サーモキャップ」が誕生した。2002年頃の話である。現在、同製品は商社を通して多くの企業に販売されており、「会社の売上に貢献している」

ネジが発熱でサーモキャップの色が変化
ネジが発熱でサーモキャップの色が変化