プロテオグリカンは平成12年に弘前大学が抽出技術を確立したのを機に事業化が進められ、平成24年以降、サントリーウェルネス、ダイドードリンコといった大手メーカーの採用が相次ぎ、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン等と並ぶ大型の健康&美容素材としての成長に期待が集まっている。

地域発の健康素材としてプロテオグリカンの国内での知名度は、ここ数年で飛躍的に高まった。しかし、「プロテオグリカンをめぐる事業は、今、大きな分岐点に差し掛かっている」と弘前大学でこれまでプロテオグリカンの研究をリードしてきた中根明夫教授は指摘する。

弘前大学におけるプロテオグリカン研究は故高垣啓一教授が、鮭の鼻軟骨から酢酸による抽出法を確立してから急速に進展した。その研究を引き継いだ中根教授は、プロテオグリカンの作用機序、特に炎症抑制作用にかんするメカニズムに詳しい。プロテオグリカン研究の将来とその事業の行く末について聞いた。

問:プロテオグリカンをめぐる事業が、分岐点に差し掛かっているというのはどういうことでしょうか

中根:文部科学省の研究助成プロジェクト、青森県の支援などを受けながら、プロテオグリカンに関する研究、およびそれに関連した事業を平成16年からほぼ15年にわたり続けてきたわけですが、ひとつの素材についてこれだけ長期間にわたり研究が継続されることは大変めずらしい。それだけプロテオグリカンには様々な可能性があるからなのです。幸いと健康&美容素材としては、県の枠を超えて全国区になり、素材事業としても成長性が出てきました。分岐点に差し掛かっているというのは、プロテオグリカンが、青森発の素材として地域だけに自足せずに、更に外に向かって成長していくための分かれ目に来ているという意味です。

問:次のステージに向かうために研究者や事業に関わる人々の意識も変わる必要があるということでしょうか

中根:そうですね。わかりやすくいえば、青森県が生み出した健康素材として地域にとどまるのか、更に外に目を向けて世界市場を目指すのかというような言い方になるでしょうか。もちろんその両方目指せばよいのですが、地域に密着するにしても、世界市場を目指すにしても新たな戦略が必要になります。

例えば、膝関節などの分野でプロテオグリカンの知名度が上がったことで、他の健康素材、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン等との競合関係が生まれています。ヒアルロン酸は、中国が製造しはじめたことで急激に価格が下がり、原料分野では今や日本企業の存在感がありません。「あおもりPG」という素材のブランディングを疎かにすると、これと同じ轍を踏むことになりかねません。

問:プロテオグリカンは、もともと分子量が大きく、抽出法によっても形が異なり、それが異なる機能性を有する可能性があるということを先生も研究を通じて示唆されています。

中根:その通りです。だからプロテオグリカンについては、ヒアルロン酸のようにコモディティー化はしにくいという優位性があります。今後は「あおもりPG」の機能性よびそのメカニズムについて更に研究を進め、その研究成果を素材としての差別化ポイントにしていく必要があります。

問:そもそもプロテオグリカンは、何に良いのか、作用機序というものはどのように考えられているのですか。

中根:プロテオグリカンは、糖鎖とコアタンパク質の複合体です。研究を始めたときに驚かされたのは、一般的に糖鎖には免疫力を上げる効果があるのですが、プロテオグリカンはその逆で免疫作用を抑制する働きが見られたことです。免疫作用の過剰反応が原因といわれる潰瘍性大腸炎などへの応用が考えられたのもこうした理由によります。

プロテオグリカンの生理活性作用については、研究中ですが、分子量が大きいことから腸管を通り抜け、血中に入って何かしらの生理活性をもたらすのではないと考えられます。腸内環境とプロテオグリカンの経口摂取との関係について研究を進めると、小腸内の糖分解性細菌、小腸・大腸の乳酸菌、免疫調節に関わる細菌に作用して、腸内細菌叢を変化させることがわかってきました。それが免疫機能を正常化させるのではないかと考えています。つまり、薬のように特定の成分が、生理活性作用を発揮するのではなく、腸内環境を整え、体全体の免疫作用を正常化させることで、炎症作用をコントロールできると考えられるのです。漢方的な働き方と表現しても良いかもしれません。ですから、プロテオグリカンは、腸管のみならず、全身各部位の炎症性疾患の予防・治療に効果を持つ可能性があるのです。

弘前大学 中根明夫特任教授
弘前大学 中根明夫特任教授