人生100年時代を見据えた、次世代の美容・健康素材としてプロテオグリカンに大きな関心が集まっている。美容、健康の両面で多くの機能性を持つ素材として評価される一方、弘前大学の研究成果から生まれた地域健康素材が産官学連携により地域の産業育成や市場創出に貢献したプロジェクトとしても高く評価されている。

プロテオグリカンは、プロテイン(たんぱく質)とグリカン(多糖)の複合体だ。中心となるコアたんぱく質に多数の糖鎖が結合した構造をしていて、糖鎖と糖鎖の間に水分を保持する働きがあることから保水性に優れている。

コラーゲンやヒアルロン酸とともに全ての動物の皮膚や軟骨等に存在し、皮膚ではハリや弾力、関節では、軟骨に含まれクッションのような役割を果たしている。サプリメントなどの分野でコラーゲンやヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸といった素材は、既に良く知られているが、プロテオグリカンは、これらをさらに上回る働きをもつ素材としてさまざまな研究が進められている。

第一には、高い保水力や弾力性、潤滑性を活かして化粧品などへの応用が進められた。近年の研究で、「細胞のよみがえり因子」と称されるEGF(上皮細胞増殖因子)と似た作用があることもわかってきた。

第二には、健康食品や医療分野などへの応用だ。プロテオグリカンには細胞の増殖や分化、免疫機構の調整に深くかかわっており、抗炎症作用やアンチエイジング等の機能があることが明らかになっている。動物やヒト細胞を使った弘前大学の研究では、関節炎、メタボリックシンドロームの改善、難病指定されている潰瘍性大腸炎の症状緩和等に対する効果が確認されている。

こうした大きな可能性があるにも関わらずプロテオグリカンは、これまでコラーゲンやヒアルロン酸のように知られてこなかったのはなぜだろうか。

その理由の一つは、分子量が大きくかつ複雑で、素材としてそのまま取り出すことが困難だったことがあげられる。研究者の間でもプロテオグリカンの可能性については早くから高い関心が持たれていたのだが、その試薬は1gあたり3000万円という極めて高価なものだった。その結果、基礎研究が進まず、応用研究も生まれてこないという状況にあった。

その壁を破ったのが、弘前大学医学部の故高垣啓一教授だ。高垣教授は、鮭の鼻軟骨を薄切りして酢漬けにして作る青森の郷土料理「氷頭なます」に着目し、酢酸抽出により鮭の鼻軟骨からプロテオグリカンを効率的に抽出する方法を確立した。

この酢酸抽出法によるプロテオグリカン量産化の道が開けたことで、弘前大学のプロテオグリカン研究も一気にすすむことになる。青森の地元企業、角弘との共同研究により、サケ鼻軟骨から高純度かつ大量にプロテオグリカンを精製する技術が確立された。水産加工品の製造工程においてサケ頭部は廃棄されることが多かったが、活用の道が開けたことで資源の有効利用の観点からも、その製造法は高く評価されている。

弘前大学の研究が進むにつれて、先述した様々なプロテオグリカンの機能が次第に明らかになった。そうした研究成果をもとに青森県、弘前市との連携が進み、地域資源として産学官連携の支援が行われるようになった。そうした産学連携の成果として、プロテオグリカンの市場創生に大きなきっかけとなったのが、原料メーカー一丸ファルコスとの連携だ。一丸ファルコスは、健康食品、化粧品のメーカー等に幅広いネットワークを持ち、弘前大学や青森県が支援している素材としての信頼感もあり、健康・美容素材として数多くの企業で採用が進んだ。地域発の健康素材として最も成功した産学官連携プロジェクトとして、2011年には農林水産大臣賞2013年には文部科学大臣賞を受賞した。

また、2017年には一丸ファルコスが出品したプロテオグリカンが米国最大の原料・素材展示会「ナチュラルプロダクツEXPO」において、最新の優れた機能性原料に贈られる「最優秀新成分賞」を受賞し、世界中からも注目を集めている。

次世代の健康・美容素材として着々と地歩を固める一方で、地域発の素材、地域資源としての活用も進められた。

青森では、地元企業が中心となり、「あおもりPG」の認知度向上と信頼性の獲得を目的に平成23年7月に「青森県プロテオグリカンブランド推進協議会」が設立され、平成28年7月には「あおもりPG推進協議会」(会長・櫛引利貞氏)として一般社団法人化された。あおもりPG推進協議会では、あおもりPGを一定量以上配合した商品に「あおもりPGマーク」を付与、品質や安全性を規定した。現在、あおもりPG認証商品は現在167商品にのぼる。

米国の展示会で「最優秀新成分賞」を受賞
米国の展示会で「最優秀新成分賞」を受賞