生成AIなどの学習や高度なグラフィックス処理を、手元のマシンで行いたい。そこで有効な選択肢となるのが「ワークステーション」だ。それではワークステーションは、一般的なPCとどこが異なるのか。本稿では注目すべき5つのポイントと利用シーンについて解説したい。
ワークステーションとPCの違い5つのポイント
1990年代までのワークステーションは、OSとして「UNIX」を採用し、プロセッサもx86ではなくRISCプロセッサなどを搭載したものが主流だった。そのためワークステーションとPCは誰が見ても「全く異なる存在」だった。
2000年代に入るとx86+Windowsのハイエンドモデルがワークステーションと呼ばれるようになり、両者の違いはあいまいになったように見える。しかし現在のワークステーションも、一般的なPCとは別物だと考えるべきだ。その理由は以下の通りである。
| ワークステーション | 一般的なPC | |
|---|---|---|
| GPU | 高性能なGPUを搭載 | 非搭載またはエントリークラスのGPUを搭載 |
| 部品の信頼性 | 24時間365日の高負荷運用を想定(サーバーグレード) | 1日数時間の使用を想定 |
| メモリー | ECCメモリー | 一般的なDDRメモリー |
| ISV認証 | 取得していることが一般的 | 原則なし |
| 拡張性 | 拡張スロットが豊富 | 比較的少ない |
GPU
ワークステーションが一般的なPCと圧倒的に違うのは、高性能なGPU(Graphics Processing Unit)を搭載している点だ。GPUはもともと映像描画専用のプロセッサだったが、2006年に並列処理向け開発環境が提供開始されたことで、GPUによる汎用的な並列計算が可能になった。これを契機に、科学技術計算やAI学習など、膨大な並列処理を必要とする分野で活用が広がっている。
最近のAI PCには、AIの推論計算を得意とするNPU(Neural Processing Unit)が搭載されるようになっているが、GPUはNPUと比較しても性能が非常に高く、推論処理の速度がNPUの数百倍にもなるケースがある。
例えば最新世代のデータセンター向けGPUでは、演算性能が18PFLOPsに達する例がある。これは、推論処理の性能値を示す「TOPS(Tera Operations Per Second:1秒間に何兆回演算できるのか)」に換算すると、1万8000TOPSに相当する。マイクロソフトが「Copilot+ PC」で推奨している性能値は40TOPS以上なので、その450倍の能力があることになる。
| 一般的なNPU | 40TOPS程度 |
| GPU(最新世代データセンター向けのGPUの一例) | 18PFLOPs(約1万8000TOPS相当)※単純換算 |
GPUは処理速度が非常に速い一方で、消費電力が大きいという特性もある。そのためより強力な電源ユニットが必要になる。さらに、消費電力が大きくなれば発熱も大きくなるため、効率的な排熱・冷却を行うための設計も欠かせない。
部品の信頼性
ワークステーションは膨大な計算処理を長時間、場合によっては数日間にわたり、高い負荷がかかった状態で遂行することが求められる。この間にマシンが停止してしまえば、計算をやり直す必要が生じてしまう。そのため、電源ユニットやマザーボード、冷却ファンなどが、24時間365日の稼働に耐えられるよう、サーバーグレードの品質でつくられることが一般的だ。
メモリー
また長時間の計算中に起きる「原因不明のフリーズ」や「計算ミス」も避けなければならない。そのため内蔵しているメモリーには、メモリー内で発生したデータのエラーを自動修復するECC(Error Correction Code)機能が実装されている。このような機能は、一般的なPCには通常は採用されていない。
ISV認証
ワークステーションには「ISV(Independent Software Vendor)認証」というものがある。これは、CADやCG、デザイン、科学技術計算を行うソフトウエアのベンダーが、「このハードウエアなら確実に動作する」ことを認定した証である。ISV認証があるワークステーションであれば、これらのソフトウエアが確実に動作し、万一不具合が発生した場合でもサポートを受けられる。
拡張性
製品にもよるが、一般的なPCに比べてより多くの拡張スロットを持っていることが多い。これもワークステーションの特徴だといえるだろう。この拡張スロットにGPUを追加実装していくことで、処理性能をさらに高めることができる。
ワークステーションの活用シーン
このようにワークステーションは、一般的なPCとは大きく異なっている。その理由は、用途が異なっているからだ。ワークステーションは、主に次のような用途で活用されている。
AIモデルの学習
膨大な並列計算を得意としているため、学習モデルを最初につくる段階や、実際に学習させる、といった使い方に適している。この場合、電源を常時接続した状態でGPUを「ぶん回して」使用することになる。
ローカルでの推論処理
AIによる画像の生成などの処理をクラウド側で実行すると、書き換えのたびに利用料金が発生してしまう。これに対してローカルのGPUを使えば、追加コストは不要だ。またワークステーションクラスの処理性能があれば、ローカル処理の方が速い場合もある。これによって、クリエイティブな作業に集中できるというメリットがある。
クリエイティブな業務
AI領域での活用以外にも、CADを使った製品設計や画像・映像編集といった、クリエイティブな業務で活用されることも多い。GPUの能力が高いほど、処理や描写が高速になるからだ。拡張スロットにGPUを追加しディスプレイに接続することで、複数画面に高速表示させる、といった使い方をするケースも少なくない。
このようにワークステーションは、一般的なホワイトカラーとは、ユーザー層がそもそも異なっている。より専門的でクリエイティブな職種の人々に向けたものだといえるだろう。
ワークステーションにおけるデル・テクノロジーズの優位性
ワークステーションの選定で、有力な選択肢の1つといえるのが、デル・テクノロジーズである。同社には以下のような特徴があるからだ。
先進的なアクセラレーター技術への対応
デル・テクノロジーズは、高性能な演算処理を実現する最新世代のアクセラレーターに幅広く対応している。そのため、高負荷な演算やAI処理を想定した用途でも、豊富なラインアップの中から最適な構成を選択できる。中には、複数の高性能演算モジュールを搭載可能な、極めて高い処理能力を備えたモデルも用意されている。
高い製品開発能力
前述のようにワークステーションでは、高信頼性や排熱処理などに配慮した設計が不可欠だ。この点において、デル・テクノロジーズは優位性が高い。PCやワークステーションだけではなく、高性能演算を支えるサーバー製品などの開発・製造も行っているからだ。これらは大規模なAI基盤を運用するデータセンターにも大量導入されている。そこで培われた技術をワークステーションにも生かすことで、サーバーグレードの品質と耐久性を備えた製品を実現している。これは幅広いIT製品を扱っているデル・テクノロジーズならではの特徴といえるだろう。
AI開発特化型ソリューションの提供
AI開発に特化した「Dell Pro Max with GB10」という、特別なソリューションも提供している。これは汎用的なOSではなく、AI処理に最適化された専用環境で動作し、コマンドラインによる高度なAIワークフローの実行を可能にするなど、AI開発に特化したプラットフォームとなっている。
ワークステーションは専門的な職種向けの製品
ワークステーションは一般的なホワイトカラー向けPCとは設計思想も用途も異なり、専門的・クリエイティブな職種向けに処理性能や安定性を追求した製品である。AI開発やシミュレーション、CAD設計、映像制作など、高負荷かつ高精度な処理を要する業務では、GPU性能や部品の信頼性、ECCメモリー対応、ISV認証、拡張性といった要素を選定時に確認し、業務要件に最適なモデルを見極めることが重要である。こうした観点から、要件に合致する構成を柔軟に選択できるデルのワークステーションは有力な選択肢の一つである。
よくある質問
Q.ワークステーションとPCの違いは?
ワークステーションは、高度な処理性能と高い安定性を両立するよう設計された、プロフェッショナル向けのPCである。
高性能GPUやECCメモリーを搭載し、24時間365日の高負荷運用を想定した部品が使われている点が、一般的なPCとの大きな違いといえる。
Q.ワークステーションは何に使用される?
ワークステーションは、処理性能や安定性が業務成果に直結する用途で使われている。
具体的には、AIモデルの学習やローカル推論処理、CAD設計、画像・映像編集など、高負荷な処理を安定して行う必要がある業務に適している。
Q.デルのワークステーションがおすすめの理由は?
デルのワークステーションは、高性能GPUへの対応力と、サーバーグレードの信頼性設計を両立している点が強みである。
また、AI開発に特化したソリューション提供や、最新NPUを搭載したモデルなど、用途に応じた柔軟な選択肢を用意している点もユーザーに支持されている。