企業における生成AI活用が広がる中、クラウドではなく手元のPC上でAIモデルを動かす「ローカルLLM」への注目が高まっている。マイクロソフトが「Copilot+ PC」によって、AIを稼働させるためのPCスペックの基準を示したことも、この動きに拍車をかけている。

本稿では、ローカルLLMが注目される背景とそのメリット、実用的に運用するためのPC選定のポイントを解説する。

情報漏えいの危険性があるクラウド型の生成AI

 業務の効率化に大きく貢献するとして、急速に普及している生成AI。今後は生成AIを使いこなせるか否かで、企業の競争力が大きく左右されるとも指摘されている。その一方で、クラウドサービス型の生成AIの利用を躊躇している企業も少なくない。

 理由は様々だが、最大のものは社内の機密情報が外部に流出するリスクだろう。顧客情報を扱う部門や、従業員の情報を管理する人事部門では、クラウドサービス型の生成AIを使うことで機微情報が漏えいする危険性がある。また金融業界や自治体、官公庁では、セクター全体でクラウドへのデータ送信に慎重にならざるを得ない。

 こうした機微情報を扱う部門や業種において、ローカルLLMは重要な選択肢となる。もちろん「完全なローカル運用」は現実的に難しいため、扱う情報に応じて「ローカルとクラウドを使い分ける」ハイブリッドアプローチが現実解になる。

ローカルLLMとはどのような技術か

 「ローカルLLM」とは、クラウドサーバーに依存せず、手元のPC上で大規模言語モデル(LLM)を動かす技術のことだ。ChatGPTをはじめとするクラウド型の生成AIは、入力したテキストがインターネット経由で外部サーバーに送信され、そこで処理される。一方、ローカルLLMはPC内部で処理が完結するため、データが外部に出ることがない。

 以前はローカルでLLMを動かすには高性能なGPUを搭載した専用機が必要だったが、NPU(ニューラルプロセッシングユニット)を搭載したPCの普及により、一般的なビジネスPCでも実用的なレベルでの運用が可能になってきた。これがローカルLLMへの注目度が急速に高まっている背景にある。

ローカルLLMとクラウド型生成AIの違い
項目ローカルLLMクラウド型生成AI
AIの稼働環境PC内部で完結外部サーバー上
情報漏えいリスク低い高い
レスポンス高速ネットワーク環境に依存
運用コストPC購入費のみ(モデルは無償)月額・従量課金が発生
オフライン利用可能不可能
利用可能なモデルの多様性限定的豊富

高速レスポンスや低コストなこともローカルLLMの魅力

 日常的な業務での生成AI利用など、高速なレスポンスが求められる場合も、ローカルLLMの優位性は高い。ネットワークを介さずPC内部でAI処理が完結するため、クラウド型と比べてスピーディに回答が得られるのである。実際に「Copilot+ PC」のスペックに準拠したPCを使ってみれば、その快適さを理解できるはずだ。

 さらに、運用コストが抑えられることも、大きなメリットといえる。クラウド型の生成AIサービスでは、月額課金や従量課金(もしくはそれらの組み合わせ)によるコストが継続的に発生する。一方、ローカルLLMはPC上で動作する生成AIを使うため、このような追加コストがかからない。つまり予算管理が容易なのだ。

ローカルLLMの代表的なメリット
機密情報を外に出さないデータがPC内で完結するため、情報漏えいリスクを大幅に低減
顧客情報・人事データ・金融・自治体・官公庁などでも安心して利用可能
高速なレスポンスネットワークを介さず処理するため、クラウド型より応答が速い
日常業務での生成AI利用がストレスなく進む
比較的低コストクラウド型のような月額課金や従量課金が発生しない
予算管理がしやすく、中長期的に運用コストを抑えられる
安定した利用環境ネットワーク環境に左右されず、どこでも同じ品質でAIが使える
出張先や接続が不安定な場所でもパフォーマンスを維持

 「ローカルLLM」への注目度が高まっている背景には、このような複数の理由が存在しているのである。

ローカルLLMにはNPU搭載モデルが必須

 ローカルLLMを快適かつ効率的に活用するには、どのようなPCを選択すべきなのか。まず意識すべきは、「Copilot+ PC」のスペックだ。具体的には、40TOPS以上の性能を持つNPU、16GB以上のメモリ、256GB以上のSSDを搭載している必要がある。

 このような「Copilot+ PC」の基準を満たすPCは様々なベンダーからリリースされているが、有力な選択肢のひとつが、デル・テクノロジーズである。同社の法人向けPC製品は、エントリーモデルの一部を除き、ほぼすべてがNPUを搭載しているからだ。

 もちろん生成AIを高速に動かす方法としては、GPUを使うというアプローチもある。しかし生成AIを「常時動かす」場合、GPUは消費電力が大きく、ノートパソコンではバッテリー駆動時間に影響が出てしまう。一方、NPUは低消費電力で高速にAI処理を行える。つまりローカルLLMを日常的に使うのであれば、NPU搭載モデルが必須条件となるわけだ。

 さらにNPU搭載モデルの中でも、最新世代のプロセッサを搭載したものを選ぶことが望ましい。デル・テクノロジーズの製品であれば、このようなニーズにも対応可能だ。

メモリやセキュリティー、最適化にも配慮を

 ローカルLLMを快適に運用するうえで、メモリ容量の選択も重要だ。「Copilot+ PC」の基準は16GB以上だが、できれば32GB以上がいいだろう。さらに、ローカル環境で扱うデータの漏えいを防ぐセキュリティー機能、長時間稼働を支えるバッテリー容量、高負荷処理を想定した放熱機構などにも注目すべきだ。デル・テクノロジーズであれば、これらの要件を満たすモデルを選択しやすい

 さらに「Dell Optimizer」というAI搭載型のシステム管理ツールも無償で提供されており、パフォーマンスや消費電力などの最適化も容易だ。

ローカルLLMとのハイブリッド運用が主流に

 安全かつ快適なローカルLLMを業務の主軸に据えつつ、必要に応じてクラウド型生成AIも組み合わせるハイブリッド運用。情報セキュリティーと生産性を両立するこのようなスタイルが、これからの主流になっていくのかもしれない。

よくある質問

Q.企業が生成AIの利用を躊躇する理由は?

 企業が生成AIの利用をためらう最大の理由は、社内の機密情報が外部に流出するリスクだと考えられる。顧客情報を扱う部門や人事部門はもちろん、金融機関・自治体・官公庁では、クラウドへのデータ送信そのものに慎重にならざるを得ない事情がある。

Q.ローカルLLMのメリットは?

 ローカルLLMの主なメリットとして、以下の3つが挙げられる。

  • データがPC内で完結するため情報漏えいリスクを大幅に低減できる
  • ネットワークを介さず処理するためクラウド型より応答が速い
  • 月額課金や従量課金が発生しないため運用コストを抑えられる

Q.ローカルLLMに適したPCとは?

 ローカルLLMを快適・効率的に活用するには、以下のスペックを持つPCが必須といえる。

  • 40TOPS以上の性能を持つNPUを搭載した(できれば最新世代の)プロセッサ
  • 16GB以上(できれば32GB以上)のメモリ
  • データの漏えいを防ぐセキュリティー機能
  • 長時間稼働を支えるバッテリー容量
  • 高負荷処理を想定した放熱機構

 デル・テクノロジーズの法人向けPCは、こうしたニーズに対応できるラインアップをそろえている。