展示と並行して行われるセミナーでは、「Keynoteセッション」として3本のプログラムが予定されている。三菱電機FAシステム事業本部名古屋製作所副所長の都築貴之氏は、「『DX』×『e-F@ctory』加速する、ものづくりトランスフォーメーション」と題した講演を行う。デジタル技術の活用でビジネスのやり方を柔軟に変えていくデジタルトランスフォーメーション(DX)は、製造業でもIoTやAI、5Gネットワークなどの技術の活用で推進することが求められている。同社はFAとICTの連携による次世代工場のコンセプト「e-F@ctory」を展開しており、そこにDXの着想を掛け合わせることで、どのような価値向上をもたらそうとしているのかを紹介する。

 2本目のKeynoteセッションは、クボタ 特別技術顧問で工学博士の飯田 聡氏による講演「クボタの目指すスマート農業」。日本では人口減少が取り沙汰されているが、グローバルレベルで見ると人口は増え続けており、食料問題は長期的にも避けられない。食料生産の効率化が求められる中で、同社が目指しているのがICTを活用した次世代農業の確立だ。IoTなどを使ったスマート農業の技術開発を進めており、農業データ活用による日本型精密農業の実現や、自動化・無人化による省力化などによって、食料生産を担う農家が直面する課題の解決に挑んでいるという。新たなビジネスモデルの展開も含めた、農業の将来像について語ってくれぞうだ。

 Keynoteセッションにはもう一つ、アマゾン ウェブ サービスジャパンのエバンジェリスト、亀田治伸氏による講演「ITの進化、そしてそれを支えるクラウドがものづくりと一緒に歩む道」がある。同社が展開する「Amazon Web Services」(AWS)など、クラウドのサービスはITシステムの開発や利用の環境を大きく変えた。一方で製造業の世界では、設計や製造にまつわる情報を外部、それも多くのユーザで共有するクラウド環境に置くことには抵抗があり、クラウド活用は進まないとみられていた。

 しかしIoTなどにより扱うデータが膨大になり、自社内に構築したシステムで管理するオンプレミスの環境では管理が難しくなったことから、製造業でもAWSなどクラウドへの志向が高まりつつある。AIなど新たな解析技術の活用ニーズも、クラウドへのシフトを後押ししている要因だ。亀田氏の講演は、クラウドの進化がものづくりにどんな影響を与えていくのか、今後どのように進化するのかについて、AWSを例に示すものになるだろう。

IIFES2019では、3本のKeynoteセッションを始め、多彩な講演プログラムが行われる。

海外動向を紹介するプログラムも

 特定のテーマに絞った「テーマセッション」では、「制御システムセキュリティセミナー」で、経済産業省 商務情報政策局 サイバーセキュリティ課長の奥家敏和氏が、「産業分野におけるサイバーセキュリティ政策」について講演する。産業分野でセキュリティ対策が求められているのは製造業だけでなく、特に電力や水道、交通などのインフラ分野でのセキュリティ被害は、人間の命にも直結しかねない重要な問題だ。同省が進めるサプライチェーン全体でのサイバーセキュリティ対策について講演を通して紹介するとともに、研究機関やベンダ、ユーザなどを交えたパネルディスカッションを行う。

 さまざまな知恵を集めたものづくりを可能にする手段として、オープンイノベーションへの関心が高まっているが、その具体例を示すテーマセッションが「オープンイノベーション拠点TIAの取り組みと人材育成活動」だ。TIAは産業技術総合研究所や複数の大学、研究機関が連携してイノベーション推進活動を行っているオープンイノベーション拠点である。セッションでは産業技術総合研究所 理事の金丸正剛氏が、ものづくりに関する研究開発プロジェクトとその成果を、講演を通して紹介する。さらにイノベーションを担う人材育成の取り組みについても語る予定だ。

 海外の動向を主題としたテーマセッション「世界ものづくりフォーラム」も見逃せない。Industrie 4.0を最初に提唱したドイツ、インターネット技術で産業分野の課題解決に取り組む「Industrial Internet」を提唱する米国の大使館やベンダの担当者を招き、それぞれの最新動向やユースケースを紹介する。労働力不足や環境負荷軽減などは、日本の製造業だけでなくグローバルの製造業が共通して抱える問題であり、ドイツや米国の取り組みは日本の製造業にとっても参考になるはずだ。

 海外動向を知るテーマセッションは他にも、中国の自動化技術展示会「SPS-Industrial Automation Fair Guangzhou」の特別セッション「中国のスマート製造におけるAI/ビッグデータ/IIoTのメガトレンドとアプリケーション」もある。中国の製造業は豊富な労働力を背景にした人海戦術のイメージがあるが、国を挙げて製造業の強化に取り組んでいることもあって、想像以上に自動化などの取り組みが進んでいる。その中国製造業の現状や課題、自動化やロボット活用などの状況について、中国科技自動化アライアンス スマートファクトリー研究所 所長で事務局長の王 健氏が語る。

異常データを生成して検知に生かす

 「スポンサードセッション」にも興味深いテーマが並ぶ。オムロン 執行役員でインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 技術開発本部長の福井信二氏の講演「技術イノベーションによる未来工場~5Gで製造現場はどう変わる」では、工場での5G活用の実証実験などをもとに、製造現場がAIやIoT、5Gでどのように変わるかを提示する。東芝インフラシステムズのスポンサードセッションでは、物理環境と仮想環境を連動させるサーバーフィジカルシステム(CPS)を実現するうえで、物理環境側にどのような要件が求められ、どう進化させていく必要があるかを提言するという。

 また日本マイクロソフトによるスポンサードセッションでは、OTとITの融合によるデジタルイノベーションをテーマにするほか、MathWorks Japanのスポンサードセッションでは、同社のアプリケーションエンジニアリング部シニアアプリケーションエンジニアの王暁星氏が、故障データを必要としない異常検知の方法を提案する。センサからのデータをもとに異常を早期に検知するためには、異常時のデータをあらかじめ用意しておく必要があるが、実際には多くのデータを蓄積できるほど異常が起きるわけではないため、どうしてもデータは不足がちになる。そこでMathWorks Japanの王氏の講演では、物理モデルから異常データを生成するというアプローチを紹介する。また機械の残寿命の予測手法なども併せて紹介するとしている。

IoTの推進レベルを見える化

 出展者による「出展者セミナー」では、Industrial Automation Forum(IAF)の担当者による「SMKL」指標を紹介するプログラムなどが予定されている。SMKLは製造現場のIoT化がどこまで推進できたかを見える化するための指標。経営側による投資判断に活用されることが期待されており、IoT導入を推進する担当者にとっては興味深いものになるに違いない。

 その他の出展者セミナーのテーマには、工業用無線規格のISA100に対応したワイヤレスモジュール、TSN(Time-Sensitive Networking)対応でリアルタイム性を持たせた産業用Ethernet、工場とオフィス環境をつなぐインタフェースでデフォルトとなりつつあるOPC UAなどに対応したコントローラ、クラウド側にモータドライブデータを提供できるインバータ、現場の記録をWebで見える化するシステム、プラントの予兆保全、制御盤製造の合理化をもたらす電気CAD、AIによるプラント自動制御事例、本質安全防爆の手法、ビッグデータ解析、次世代フィールド機器、RPA(Robotic Process Automation)の活用、バルブ診断技術の最新動向、通信や動画技術を活用したガス検知器・警報器、電力のデマンド管理による省エネ、セルフモニタリングセンサ、異機種のPLC間でソースプログラム交換を可能にする国際標準、高精度の温度計測技術、多品種少量生産工程の異常予兆検知などがある。特にプラント関連のプログラムが数多くラインアップされており、課題解決のための最新情報を求めるプラント技術者には目が離せないものになるだろう。

■IIFES 2019公式サイト
https://iifes.jp/