「2027年保守切れ問題」に今すぐ向き合うべき理由
財務・会計、人事・給与、販売管理など、企業の様々な業務を支えるERP(Enterprise Resource Planning)システム。その代名詞にもなっているのが、ドイツのSAP社が提供するSAP ERPだ。日本でもおよそ2000社が導入しているとされているが、それらユーザー企業のシステム管理者を悩ませている問題がある。SAP ECC6.0の標準サポート(メインストリーム・メンテナンス)が2027年12月31日をもって終了する「2027年保守切れ問題」である*¹。
すなわちSAP ECC6.0のユーザー企業は、2027年末までに、(1)高機能化と高性能化が図られた最新バージョンのSAP S/4HANA(以下、S/4HANA)に移行する、(2)当面の機能強化や高性能化は諦めて、SAP社と延長保守を契約してSAP ECC6.0をしばらく使い続ける、(3)他のERPに切り替える、といった選択肢の中から、自社のIT戦略にふさわしい方法で必要な措置を講じていかなければならないことを意味する。
一方、実際のユーザー企業の対応はというと、あまり進んでいないのが現状だ。情報システム担当者からは、「まだ先のことなので急ぐ必要はないと考えている」「費用や期間を含めてマイグレーションの影響が分からない」「自社として全体方針が決まっていない」、といった声が聞こえてくる。
しかし対応の先送りは新たな課題を生み出してしまう。まず懸念されるのが、2027年に近づくにつれ高まると予想されるSAPのコンサルタント不足で、徐々にではあるが既に始まりつつある状況だ。
また、OSをはじめとするプラットフォームの更新や、クラウド、AI、IoTなどへの将来の取り組みを考えると、まだ時間があるからとSAP ERPのサポート問題を棚上げにするのではなく、ITの全体戦略の中で早めに検討を進めるべきだろう。
ではSAP ECC6.0のユーザー企業は「2027年保守切れ問題」にどのように対処すればいいのだろうか。