バックアップ環境が重大なリスクに
1987年に開学した駿河台大学は、法学部、経済経営学部、メディア情報学部、スポーツ科学部(現代文化学部を基礎として改組)、心理学部の5学部と、大学院および研究所を擁する総合大学。建学の精神である「愛情教育」の理念のもと、学生一人ひとりの個性を尊重し、社会人として活躍するのに十分な学力と能力を身に付け、地域社会の様々な活動の中で中核的役割を担うことのできる人材育成を目指している。
同校は語学教育やICT教育にも力を入れており、図書館、情報センター、博物館などの機能を統合したメディアセンターには学生が自由に使えるパソコンを約140台設置。いち早く次世代の高速無線LAN「Wi-Fi 6」をキャンパス全域に展開したほか、教職員と学生をつなぐ専用スマートフォンアプリを介して各種情報のプッシュ配信を行うなど、スマートで快適な大学生活を送るための環境を整備している。
このように充実したICT環境を整える一方で、課題もあった。それがサーバーのデータバックアップだ。
「当校の情報ネットワークは、教学系と事務系の2つに分かれており、それぞれのファイルサーバーやAD/DNS/DHCPサーバーのデータは、個別に立てたバックアップ・アプライアンスで取得する形態でした。しかし、導入からかなりの年数が経過し、正確な手順についてもうまく引き継がれておらず、実際にすべてのデータが取れているのか、きちんとリストアできるのか、すべてを正確に把握することが難しい状況だったのです」と、駿河台大学の和田 拓也氏は語る。
日次で行う夜間のバックアップ処理が翌朝の始業時間までに終わらないことも悩みの1つだった。また、職員用のクライアントPC、約120台のバックアップはアプライアンスのデータ容量ひっ迫を避けるため以前から取得していなかったが、過去何回かPCのハードウエア故障によってデータの救出ができない事故が発生していた。
さらに追い打ちをかけたのが、大規模停電によるトラブルだ。

メディアセンター事務部次長 兼 情報システム課長
阿部 功氏
「変電所に雷が落ちた影響で、キャンパスおよび市内全域が長時間にわたり停電してしまいました。当時は既にコロナ禍でオンライン授業が常態化しており、講義資料の配付や学習状況を管理できるLMS(Learning Management System)も稼働させていたため、バックアップからの復旧を試みたのですが、うまくいきませんでした。結局、丸一日LMSが利用できない最悪の事態となったのです」と駿河台大学の阿部 功氏は説明する。
こうしたバックアップ環境の課題を同校はどう解消したのか。次ページ以降ではその仕組みと成果について紹介したい。