システムからデータを抜き出しExcelで集計という非効率

 グローバルに事業展開する企業において、本社や地域本社と各拠点間のコミュニケーションは大きな課題だ。コロナ禍による出張制限で、課題はより大きくなっているのではないだろうか。

 国境を越えたコミュニケーションには、もともと言語や文化といった壁がある。この壁を乗り越える意味で、データが果たす役割は大きい。本社と各現地法人が数字を共有すれば、同じ認識に基づいて素早い意思決定ができるはずだ。

 しかし、現実との乖離は大きい。例えば、各現地法人の毎月の実績集計結果が、1カ月遅れで報告されている企業は少なくない。単に数字を集めるだけの業務なのに、なぜこれほど集計に時間がかかるのか。これは経営陣には到底見えない、経験した人でなければ分からない苦労が多く存在する。1つのレポートの裏側には、各拠点で相当の工数が費やされていて、かつ世界各地から集まったデータを補正・整理する本社側でもかなりの手間をかけている。

 このグローバル企業の課題を、ある製造業A社を例に見てみたい。A社は国内、アジア、欧州、北米などでほぼ同一の製品を販売しているが、地域別にバラバラのシステムや製品コード体系で業務を回している。M&Aで企業買収を繰り返し、事業を拡大し続けていること、タイなどの国では、既存の現地法人の51%の資本が入らないと支社を設けることができず、結果、既存企業が持つシステムやノウハウも再利用せざるを得ないことなどが深く起因している。ビジネスの拡大を優先してシステムをつぎはぎで運用してきた負債を、人間がカバーしているような状態に陥っているのだ。現地のシステムは現地の人しか触れない暗黙のルールもあるし、そもそも同じ製品のデータの定義やコードが各地域で不統一なため、現地の担当にしか分からない謎のExcel変換作業がそこかしこに眠っている。結果、作業をお願いするしかない本社では、レポーティングにかかる期間を受け入れざるを得ない。

 しまいには、各拠点担当の負荷が大きいので、A社はレポーティングの頻度を月1回にとどめざるを得ない。翌月終わりに前月の実績が報告されるため、本社での迅速な意思決定は難しい。特に、コロナ禍の時期には各国における緊急事態宣言の発令、撤回による日々の市場の変動が激しかったが、A社の変化への対応はうまく機能したとはいいがたい。月次の報告では、当然その月に起きるタイムリーな変化が引き起こす結果を振り返ることができないからだ。また、このような状態では、プライバシー保護やガバナンスも効いているとはまったくいえない。本社から各拠点の活動が見えないため、現地任せになりがちで不正が入り込む余地が生まれるからだ。

 A社のような課題を持つ日本企業は少なくない。次ページ以降ではこうした課題の原因を探るとともに、その解決に向けたアプローチを考えていく。

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