マルチモダリティの時代、経験と勘に基づく創薬が限界に
低分子医薬品が大半だった時代から、継続的に進歩し続けている創薬の世界。昨今、抗体医薬を含むタンパク質医薬、核酸医薬、再生医療など、その研究領域は急速に多様化し、様々な新しい治療方法・手段が現在の医療に貢献している。これらそれぞれの治療方法・手段のことを「モダリティ」といい、現在はまさに、「マルチモダリティ」の時代といえるだろう。
この状況で、従来型の経験と勘に基づいた創薬は限界が見えつつある。革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応えるためには、膨大な実験条件の組み合わせを試す必要性が生じ、かかる時間や工数が大きく増えているからだ。結果、人工知能(AI)や機械学習(ML)などの技術を活用した「データ駆動型創薬」への転換が各社に求められている。
この領域で積極的なチャレンジを続けるのが第一三共である。アドレナリンの抽出やオリザニンの発見からスタートした同社は、その後も生活習慣病向けの医薬品、抗菌剤など、画期的な医薬品を多数開発。2020年にはがん治療薬の提供も開始し、2025年度までに「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」になることを目指している。
「それにはデータ駆動型創薬へのシフトが不可欠ですが、残念ながら以前はグローバルに大きく後れているのが実情でした」と同社の国本 亮氏は振り返る。実験データの保存場所は規定されていたものの、その活用は各研究者の裁量に任されており、社内の計算環境もデスクトップPCが中心だった。

また、近年は市販化合物データやAI/MLで生成したバーチャル化合物データなどもパブリックに登場しているが、それらを使うかどうかは研究者に一任されていた。結果、創薬プロセスが属人化していたほか、時間と工数、コストが肥大化しがちだったという。
そこで同社が、この状況を変えるために具現化したのが「創薬化学研究プラットフォーム」だ。データ活用の共通基盤を整えることで、創薬プロセスの効率化、標準化を図る。どのようなプロセスを経て、このプラットフォームを構築したのか。また、それにより同社が目指すものとは。詳細を次ページで紹介しよう。