人工知能(AI)やビッグデータのビジネス活用が加速している。コンピューターをどこまで巧みに使えるかが企業競争力を決する時代に入り、注目を集めているのがHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)だ。学術研究や工学分野の頂点を支えてきたスーパーコンピューターが、高い汎用性を備えて現代に生まれ変わった、いわば「スーパーコンピューターの汎用版」である。
HPCといえば、流体解析や構造解析など、公的な研究所や大手メーカーが専門的な用途に使うイメージがある。しかしその認識は、もう古い。
AIや機械学習の登場により、HPCの活用範囲が拡大している。例えば、交通渋滞の緩和や災害時の最適な対応、物流や送電の最適ルート、人流の解析、街づくりの未来予測やエネルギーの効率化など、ビッグデータを高速に処理できるHPCのニーズは高まり、ビジネスや社会課題の解決に欠かせない存在になりつつある。
これを受け、HPC向けのCPUで圧倒的なシェアを持つインテルも大きく動いた。2022年1月11日、HPC向けの新たなCPU「第4世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー(開発コードネーム“Sapphire Rapids”)」のリリースを正式に発表した。
インテル インダストリー事業本部 HPC事業開発部長の矢澤克巳氏によれば、Sapphire RapidsはHPCを主に2つの方向で進化させる。まず、計算能力の向上だ。コア数の増加やメモリー帯域幅の拡大などにより、第3世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーと比べて実際のワークロードで最大約3.5倍と大幅に高速化する。
もう1つは、低コスト化だ。従来のHPCでは、深層学習処理を行う場合はCPUのほかにGPGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)をアクセラレーターとして購入する場合が一般的であった。Sapphire RapidsはCPUの内部に深層学習処理の学習と推論をアクセラレーションする機構としてインテル® AMX(Advanced Matrix Engine)を新たに搭載し、GPGPU無しでも深層学習を効率よく使えるようにする。導入コストを下げ、HPCをより身近なツールにする。
HPCのビジネス活用は、新たなステージに入る。すぐにHPCを使うかどうかは別にして、あらゆるビジネスパーソンはこの動向を把握しておくべきだ。HPCにいま何が起きているのか。次ページで紹介する。
