住宅メーカーや金物店などに建築資材を供給する水上は、電話やFAXによる受注業務の自動化や、出荷商品のピッキングを効率化する仕組みづくりに挑戦。まだ実現には至っていないものの、プロジェクトチームのメンバーから複数の若いデジタル人材が育つとともに、社内に刺激を与えてDXの必要性を認識させるといった効果が得られたという。同社はこれを足がかりに、引き続き多様な業務のデジタル化を推進する構えだ。

多くの業務に見られたデジタル化の遅れ

水上 宏樹氏
水上 宏樹氏
株式会社水上 取締役 副社長

 大阪市中央区に本社を置く水上は、金物を中心とする建築資材を扱う商社である。創業は1947年。現場が必要とする建材を国内外から調達して速やかに届けることで、戦後復興期から高度経済成長期にかけての建築業界をサポートした。その後、「ないものは自分たちでつくり出して届けたい」との思いから自社ブランド「ファースト」を立ち上げ、機能性とコストパフォーマンスを兼ね備えた様々な建材を開発。卸売り業にとどまらずメーカーとしての役割も担うようになった。近年は、大口需要家に企画提案する特需課、ホームセンターに商品提供を行うHI(ホームインプルーブメント)課、インターネットでの販売を手掛けるEC課、トイレや授乳室などの什器を扱うオモイオ事業部などを次々に立ち上げて業容を拡大している。

 現在の同社の売り上げは、ホームセンターやハウスメーカーへの販売と自社ECサイトでの通販が約5割、個人経営の金物店への販売が残りの5割という比率だ。「多くの金物店は電話やFAXで商品を注文されるため、その対応に手間と時間がかかっています。受注に限らず業務の大半が旧態依然としたアナログのままで、以前から改善の必要性を感じていたのですが、社内でデジタルテクノロジー活用の機運がなかなか高まらず、手をこまねいていたのが実情でした」と話すのは、同社の水上 宏樹氏だ。

井上 恵氏
井上 恵氏
株式会社水上 情報システム部 マネージャー

 そんな様子を「昭和のまま時が止まっているよう」と辛辣に評するのは、2019年に入社した井上 恵氏である。数社の情報システム部門での勤務経験を持つ井上氏は、その手腕を水上氏に買われ、水上のIT環境を整備すべく同社に転職。前職のときからデル・テクノロジーズが開催する勉強会などにも参加していた関係で、今回の「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」の開催を知った。「当社では私のような中途入社は珍しく、ほとんどの社員が新卒で採用され定年まで働いています。人材の流動性がないため外の空気に触れる機会がなく、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)のような外部の研究機関から指導を受けるのはよい刺激になると思いました」と参加した動機を説明する。

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