医薬品開発や臨床研究などにおいて、医療データの有効利用が期待されているが、医療機関や製薬会社に蓄積されたデータの二次利用は、患者の個人情報保護の観点から様々な制約を伴う。そうした状況を改善するため、製薬業界の有志メンバーからなるチームが、ブロックチェーンを用いたセキュリティー性の高いデータ共有プラットフォームの構築を模索。データを安全に分散管理する仕組みを多角的に検証している。

データ共有の新たなプラットフォームをつくりたい

 診療や臨床試験で得られたデータは疫学研究や医薬品開発にとって重要な知的財産であり、外部の研究機関や製薬企業などにおける研究に有効利用されることが望まれる。しかし、それらのデータには患者の特定につながる多くの個人情報が含まれるため、二次利用には細心の注意が払われなければならない。現状では、認可を受けた特定の機関が個人情報にひも付く部分を削除するなどの加工を施したデータが用いられているが、匿名化処理には限界があり、そもそも情報を加工する機関に個人情報がわたるという根本的な問題もつきまとう。

新井 賢太郎氏
新井 賢太郎氏
CDISC-SDTM Blockchain Team チームリーダー

 こうした課題に果敢に立ち向かい、医療データを合理的に二次利用できる仕組みを構築しようとしているのが、製薬業界で働く10人弱の有志のメンバーで構成されるCDISC-SDTM Blockchain Team(以下、ブロックチェーンチーム)だ。

 「改ざん検出が容易なデータ構造を持つブロックチェーン技術を応用した臨床データの共有プラットフォームを構築することができれば個人情報を効果的に保護でき、特定の管理団体に依存することもないデータ共有が可能になるのではないかと考え、取り組みに協力してくれるメンバーを製薬業界内で募りました」と話すのは、その発起人でありチームリーダーの新井 賢太郎氏だ。同氏は外資系製薬会社の社員で、医薬品開発に際する臨床試験のデータ解析を日常業務としている。

原 頼安氏
原 頼安氏
CDISC-SDTM Blockchain Team

 「患者数が少ない希少疾患を持つ方は特に、年齢や性別などの情報から個人を特定されてしまうリスクを抱えています。それを防ぐために二次利用データはおおまかな年齢層しか分からないように加工されたりしているのですが、そのことで医学的知見を得るためのデータとしての精度は損なわれるという悩ましいジレンマを抱えているのが実情です。個人情報をしっかり保護したうえで医療データが活発に利用されるようになることは、医療イノベーションの進展に大きく寄与すると思いました」と語るのは、CRO(医薬品開発業務受託機関)でデータ解析などのプロジェクトをマネジメントしている原 頼安氏。同氏は、この構想に共感してブロックチェーンチームにコミットし、新井氏と共にデータ共有の新たなプラットフォームづくりを主導する役割を担った。

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