経済産業省が「2025年の崖」という表現で警告を発してから7年目。いよいよ今年はその年を迎えるが、日本企業におけるレガシーシステムのモダナイゼーションは、思うように進んでいないのが実情だ。とくにERPのクラウドシフトで足かせとなっているのは、「Fit to Standard」。これを受け入れると、既存システムに依存してきた業務が回らなくなってしまうというジレンマである。どうすれば、この課題を解決できるのか?
「Fit to Standard」への対応と企業のジレンマが、モダナイゼーションが進まない課題に!?
数十年にわたって利用してきたレガシーシステムを、過去の資産を生かしつつ、最新の技術に適合した現代的なシステムに置き換える“モダナイゼーション”。経済産業省は2018年に発表した「DXレポート」で、レガシーシステムの課題を克服できない場合、DXが実現できないのみならず、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると警告し、これを「2025年の崖」と表現した。以来、レガシーシステムのモダナイゼーションに多くの企業が取り組んでいる。
その中でも代表的なのが、既存のオンプレミスERPをクラウドERPに刷新するケースだ。
IT調査会社、アイ・ティ・アールのレポートによると、2022年度のERP市場は、パッケージによるERPの市場規模が前年比3.4%減と縮小しているのに対し、SaaSによるERPの市場規模は同26.8%増である。“クラウドシフト”自体はそれなりに進捗していると言える。
「それでも、大企業ですらモダナイゼーションが完了しているのは全体の半分足らず。経産省が『崖』と区切った2025年の段階で、ようやく半分に達するかどうかというのが現状です」
このように語るのは、データ連携ツール「ASTERIA Warp(アステリアワープ)」などを提供するソフトウエア開発会社、アステリアのマーケティング本部長 兼 プロダクトマーケティング部長、東出武也氏である。

東出氏は、ユーザー企業との日常的なコミュニケーションを通じて、「どの企業もレガシーシステムに危機感は抱いているものの、まだまだ多くの企業がモダナイズに二の足を踏んでいる状況にある」という。
なぜ、レガシーシステムのモダナイゼーションは進まないのか? 大きな課題の一つとして東出氏が挙げるのが、「Fit to Standard」への対応と企業のジレンマである。
「例えば、SaaS型ERPの代表的製品であるSAPの『S/4HANA Cloud Public Edition』は、基本機能であるコアに手を加えず、クリーンな環境を維持する『Clean Core ERP』による運用を推奨しています。余分な機能をアドオンすることなく、『S/4HANA』の標準的な機能だけを使ってほしいということです。これが『Fit to Standard』(標準に合わせる)という考え方ですが、頭では分かっていても、今までのやり方や、それを支えてきた既存のシステムを完全に捨て去ることは難しい。これが、モダナイゼーションを妨げる大きな障害となっているのです」(東出氏)
では、どうすればこの問題を解決できるのか?
東出氏は、「ERPなどの基幹システムはクリーンな状態を保ちつつ、その外側に今までのやり方に対応するシステムを置き、両者の間で柔軟にデータ連携ができる仕組みを整えるのが有効な解決策だと言えます」と提案する。
次のページでは、データ連携の仕組みを整えてモダナイゼーションを実現した「日本生命保険(以下、日本生命)」の事例を紹介する。
