そもそも「感情」とはどのようなものなのか
ロボットに人間と同じような「感情」を持たせることは可能なのか――。このテーマに取り組み、人の感情のメカニズムやそれを再現するAI技術の研究を進めているのが、奈良先端科学技術大学院大学の日永田 智絵氏だ。AIが大きな注目を集める時代、ロボットが感情を持つことによってどのようなことが可能になるのか。現在までの研究成果や、今後目指すことについて話を聞いた。
一言で「感情」といっても、私たちはそれが何なのかをはっきり認識できていない気がします。感情とは、どのようなもののことを指すのでしょうか。
日永田 感情は、学術的には情動(エモーション)が何かの刺激によって起きた身体反応を指し、その身体反応を認識したものと定義されています。私の研究も基本的にはこの定義に則っており、内受容感覚(空腹、のどの渇きなど身体内部の状態を捉える感覚)と外受容感覚(視覚、聴覚などの五感で外部環境を捉える感覚)という2つの情報を統合した時に脳の中で認知される感情を人工的につくることで、人に寄り添うロボットを実現しようとしています。

昨今、注目を集めているChatGPTなどはあくまでソフトウエアであり、「身体」を持ってはいません。つまり、他者の内受容感覚と外受容感覚を与えて疑似的に学ばせることはできても、それらの感覚を自ら獲得することはできないのです。
そこで、ロボットという身体を持たせて、自ら感覚を獲得できるようにするのですか。
日永田 その通りです。感情を実装するためには、現実の身体を有していることが要件になる、というのが私の仮説です。
例えば、私たちは悲しいことがあったとき、「落ち込む」「落ちる」というイメージを持ちますが、これは日々の生活の中で身体が重力の影響を受けているからにほかなりません。AIがこのような感情を持つようになるためには、実際にロボットに組み込んで身体を与える必要があると考えています。
とても興味深いです。では、実験の内容についても教えてください。