ビジネスシーンでの活用が急速に拡大している生成AI。誰もが当たり前のように、日常業務で生成AIを使う時代が到来しつつある。それでは業務遂行の重要なパートナーとなる法人向けPCは、AI時代にどのような要件を検討すべきなのか。以下の観点から提言していきたい。
AI時代のPCに求められるスペック
AI時代のPCに求められるスペックは、従来のPCに比べて大きく変化している。そのスペックを満たさないPCを使い続けていれば、すぐに能力や容量が不足し、ユーザーの生産性を阻害する結果となるだろう。こうした問題を回避するため、まずはAI時代に求められるPCのスペックを、4つの観点から提示したい。
| 観点 | ポイント | 要求されるスペック |
|---|---|---|
| NPUの搭載 | AIをローカル環境で活用する場合、推論処理を高速かつ少ない電力で実行できるNPUの搭載は必須(現時点でローカル環境でのAI活用は不要でも、技術の進歩により状況が変わる可能性がある) | 少なくとも40TOPS以上 |
| メモリの容量 | AIを活用したアプリケーションなどでは使用されているコードの量や扱うデータ量が増えており、アプリケーションのデータ処理に必要なメモリ容量が増加 | ・少なくとも32GB ・大規模なAIモデルをローカルで活用する環境なら64GB以上 |
| ストレージの容量 | 業務で動画データを扱うことも増えているため、業務用PCではストレージの容量の確保も重要 | ・少なくとも512GB ・できれば1TB以上 |
| ディスプレイの解像度 | 生成AIの利用を多用する場合、縦長の表示に対応したディスプレイがあったほうが効率的 | ・通常の業務であれば1920x1080ピクセル(フルHD)程度 ・生成AIを多用する場合は1920x1200ピクセル程度の縦長のディスプレイがあると効率的 ・大画面での作業が必要になる場合は3840x2400ピクセル以上を推奨 |
NPU(Neural Processing Unit)の搭載
法人向けに限らず現在使われているほぼすべてのコンピュータは、情報処理を行う中核的な機構として「CPU(Central Processing Unit)」を搭載している。その最初の製品は、1971年にインテルが発表した「Intel 4004」だといわれており、計算などの処理を一度に1つずつ順番に行うように設計されていた。その後、複数の処理ユニットを持つ「マルチコア」型のCPUも登場したが、それでもそれぞれのコアが一度に1つの処理だけを行うことは変わりがない。
AI時代にはこの設計が、処理スピードの足を引っ張ることになる。生成AIによる推論処理は、大規模な並列処理によって高速化できるという特性を持っているからだ。そこでAI研究者達が注目したのが、並列処理を得意とする「GPU(Graphics Processing Unit)」である。もともとは映像を描画・表示するための専用プロセッサだったが、2006年ごろから並列計算向けの開発環境が整備・普及したことで、汎用的な並列計算をGPUで行えるようになった。
現在ではGPUが生成AIの学習などで広く使われるようになっているが、大きな問題が1つある。それは消費電力が極めて大きいということだ。この問題を解決するため、2017年ごろに登場したのがNPUだ。そして一般的なPCでも、NPUを搭載した「AI PC」と呼ばれるモデルが、2023年から登場するようになった。
| 項目 | CPU | GPU | NPU |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | PCの汎用的な処理 | 映像の描画・表示 | AIによる推論処理 |
| 並列処理 | 不向き | 適している | 適している |
| 消費電力 | 標準的 | 大きくなりやすい | 省電力 |
NPUはAIの推論処理を高速かつ少ない電力で実行できる。そのためAI時代のPCは、NPU搭載が必須となるだろう。ではどの程度の処理能力を持つNPUを搭載すべきなのか。マイクロソフトが次世代PCとして定めている「Copilot+ PC」のスペックでは、40TOPS以上の処理能力が求められている。これは1秒あたり、40兆回以上の演算が行える能力だ。少なくともこの数値はクリアしておくべきだろう。
メモリの容量
メモリ容量も、これまで以上に大容量のものが必要になる。これはAIアプリケーションに限らず、一般的なアプリケーションでもコード量や扱うデータ量が急増しているからだ。そのため、これまで「十分」とされていた16GB程度のメモリ容量ではすぐにメモリ不足になり、アプリケーションの反応速度が急激に悪化したり、場合によっては動かなくなる(フリーズする)、といった問題が発生する危険性がある。AIアプリを含む最新ソフトウエアで生産性を高め続けたいのであれば、最低でも32GB、できれば64GBのメモリを搭載することが推奨される。
ストレージの容量
PCにデータを格納するためのストレージも重要だ。最近では日常業務で動画データを扱うことも増えているが、それらの容量は数百MB~数GBに達することも珍しくない。またプレゼンテーション用のPowerPointファイルに動画を掲載した場合も、かなりのファイルサイズになるだろう。
このような大容量ファイルはクラウドに保存し、必要なときにアクセスするという考え方もあるかもしれないが、通信回線のスピードが遅い場合にはファイルアクセスに時間がかかってしまい、通信できない場所ではそもそもファイルにアクセスできない、という状況も考えられる。どこででもフットワークよく業務を遂行したいのであれば、512GB~1TB程度は確保すべきだ。
ディスプレイの解像度
ディスプレイのサイズは13~16インチ、解像度はフルHD(1920x1080ピクセル)程度あればいいだろう。ただし生成AIを日常的に使う場合には、表示が縦方向に長くなる傾向がある。そのため縦方向のピクセル数がより多い、1920x1200ピクセル程度のものを選ぶと、スクロールのストレスが軽減できるはずだ。あるいは思い切って、4K(3840x2400ピクセル)のものを採用するという選択肢も考えられる。
これらをまとめると、以下のようになる。
AI時代に適したPCの調達方法
AI時代のPCの調達では、上記のような「十分なスペックのものを選択する」ことが必須となるが、これに加えてテクノロジーの進化に合わせ「最新モデルへとタイムリーに更新していく」ことも、重要になる。調達時には十分なスペックだったとしても、テクノロジーの進化が速ければ陳腐化するまでの期間も短くなり、それを使い続けることで生産性を阻害する危険性があるからだ。そこで検討したいのが、調達方法の見直しだ。
固定資産として買い取ることのリスク
現在ではまだ多くの企業が、業務用PCを購入して自社資産として保有しているはずだ。テクノロジーの進化スピードが比較的緩やかで、法律で定められた償却期間(4年間)をそのまま更新サイクルにできるのであれば、この方法でも問題ないだろう。
しかし最近はテクノロジーの進化が著しく、生成AIの普及がこれに拍車をかけている。実際に、コロナ禍の最中にリモートワークやWeb会議のために購入したPCが、今では遅すぎて使い物にならないと感じているユーザーも、決して少なくないはずだ。しかし更新サイクルが4年に決まっているのであれば、そう簡単には最新PCに移行できない。
このように進化のスピードが速い時代には、「PCを所有する」こと自体が、環境変化への追随を遅らせてしまうリスクにつながるケースもある。
月額課金型モデル(DaaS)へのシフト
そこで提案したいのが、「固定資産で買って4年間で償却する」という方法から脱却し、月額課金型(Device as a Service)の活用へとシフトすることだ。これであれば、PC更新時の出費を回避でき、電気代やガス料金のように毎月の経費としてPCの費用を計上できる。そのため短いサイクルでPCを更新する場合でも、トータルコストを最小化しやすい。
PC更新時に購入に必要な予算を確保する、不足する場合には銀行から借り入れる、固定資産として登録して償却処理を行う、といったことがすべて不要になり、会社の資金をより効果的に活用できるようになる。
- PC更新時に購入に必要な予算を確保する
- 資金が不足する場合には銀行から借り入れる
- 固定資産として登録して償却処理を行う必要がある
AI時代のPCとして検討したいデル・テクノロジーズの製品群
このようなAI時代のPC選びで、有力な選択肢となるのがデル・テクノロジーズの法人向けPCだ。というのも同社の製品には以下のような特徴があるからだ。
高いカスタマイズ性
デル・テクノロジーズは創業当初からフルカスタマイズでオーダーできるという強みがあり、部門ごとに要件が異なる場合でも、必要なスペックを細かく選んで注文できるため、ミスマッチによる生産性の低下を防止できる。
幅広い製品ラインアップ
エントリーモデルからハイエンドまで製品群をカバーしており、顧客の多彩なニーズにも対応できる製品を提供。またDell Pro MaxやDell Precisionといった、ワークステーションクラスの製品もラインアップしている。
オンラインでの購入が可能な「Dellプレミア」
1つのサイトから必要な時に必要な数量と構成でオーダーでき、あらゆるITニーズに対応できる。
月額課金でPCを提供する「Dell APEX PC as a Service」
法人向けにPCを月額課金(サブスクリプション)で提供するサービスとして、「Dell APEX PC as a Service(PCaaS)」も提供している。契約期間は1~5年の中から、1年単位で選択可能だ。
AI時代に適応できるスペックを備えた最新のPCを調達することが重要
ここまで、スペックとファイナンスの視点から、AI時代のPCの調達方法について解説した。従来の業務用PCとは大きく変化していることが理解できるはずだ。この記事の内容が、戦略的なPC調達に貢献できれば幸いである。
よくある質問
Q.AI時代のPCに求められるスペックは?
AIの活用が本格的に必要になる状況に備えるため、以下のスペックを備えたPCを導入することが推奨される。
- 40TOPS以上のNPUの搭載
- 少なくとも32GB、大規模なAIモデルをローカルで活用する環境なら64GB以上のメモリ
- 少なくとも512GB、できれば1TB以上のストレージ
- 通常の業務であれば1920x1080ピクセル程度、生成AIを多用する場合は1920x1200ピクセル程度、大画面での作業が必要になる場合は3840x2400ピクセル程度以上のディスプレイ
Q.AI時代にPCを調達する際の注意点は?
固定資産として購入すると、償却期間の4年を経過する前にPCの性能が陳腐化する可能性がある。短いサイクルでの更新に対応できる体制を構築する必要がある。
Q.AI時代に適したPCの調達方法は?
月額課金モデルを活用するのが有効。PC更新時の出費を回避でき、電気代やガス料金のように毎月の経費としてPCの費用を計上できるため、短いサイクルでPCを更新する場合でも、トータルコストを最小化しやすい。

