既に始まっているデジタルツインの現場投入
あらゆる企業がDXの実現を目指して取り組みを進めている。中心にあるのはデータだ。データを収集、解析し、価値に変える。このデータによる価値創造がDXのカギを握っている。
製造業においては、IoTやAIの進展とともに次世代のものづくりとして注目されたスマートファクトリーの実現に向けた取り組みが本格化している。代表的なのが工場やプラントの操業停止を防ぐための予知保全の仕組みや、生産管理などの基幹システムと各生産設備を連動させた運転の自動化などだ。
いずれも様々なセンサーや生産設備などから得られるデータを解析して、その結果を実際のオペレーションに反映して工場やプラント運転の最適化を図っているわけだが、そのデータ主導の運転最適化をさらに前進させる技術として、今、デジタルツインを駆使した高度なシミュレーションが注目されている。仮想環境に工場やプラントを再現して、そこに実績データも取り込みながら、幅広い領域の解析・シミュレーションを実行して意思決定に役立てるのである。
その好例といえるのが三菱ケミカルのプロジェクトだ。
以下では、同社の事例を通じて、DXプロジェクトを軌道に乗せるための工夫や、製造データを利活用するために、研究・開発、生産設備、情報系など、複数の系統に分かれているネットワークから、どのようにデータを収集するべきか、そしてシミュレーション技術をどのような課題解決に結びつけられるのかなど、スマートファクトリー実現のポイントを見ていく。