イトーキの変革に立ちはだかった「3つの壁」とは

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれて久しいが、日本の製造業の現場には、依然として変革を阻む「見えない壁」が存在している。世界に誇る「カイゼン」の文化を持ちながらも、デジタル化の波に乗り遅れてしまう。その背景には、長年の成功体験が作り上げた構造的な課題がある。

 創業130年を超えるオフィス家具大手のイトーキにおいても、IT業界出身の湊 宏司氏が社長に就任した直後に、製造現場に根強く残る「歴史」「安全」「前例踏襲」という3つの壁に直面したという。現場では、キャビネット工場やチェア工場といった部門が縦割りに独立し、設計から生産へのプロセスも分断されていた。さらに、デジタル化が進む現代においても、現場の連絡手段は「紙」が中心で、数人の作業員に対して共有のPCが1台しかないなど、IT環境の整備も遅れていたという。

 こうした状況に対し、湊社長はトップダウンでiPadの導入を決断。データを活用して生産性を高める「Office 3.0」という構想を掲げた。興味深いのは、単なるツール導入にとどまらず、導入が現場の若手による自発的なアプリ開発や改善活動へとつながり、結果として「紙ゼロ」を実現するほどの成果を生んだ点だ。なぜ、イトーキの改革は「壁」を乗り越えることができたのか。

 本記事では、イトーキ湊社長とPTCジャパン神谷社長の対談およびインタビューを通じ、日本の製造業が直面するDXの障壁を紐解きながら、真の競争力を取り戻すための“本質”に迫ってみたい。

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