調査で見えた、移行先の「意外な傾向」とは
中村 調査で見えたのは、実は「クラウドへの移行」を志向する企業は少なく、5%しかいないということです。「仮想化環境から仮想化環境への移行」が55%、「ベアメタルからベアメタルへの移行」が15%と、オンプレミスを維持する傾向が強いことが分かりました(図1)。背景には、これまで数度のサーバーOSのEOSを経て、現在稼働中のシステムが「どうしても残す必要があるもの」だけになっていることがあると推測しています。
また、仮想化環境を継続する企業ではHyper-Vへの移行検討が増加していました。Hyper-Vは以前から導入企業が増加傾向にありましたが、既存の仮想化ハイパーバイザのライセンス体系が変更されたことを受けて、その動きがさらに加速したものと思われます。Windows Server 2016のEOSが、仮想化環境の見直しを考えるよい機会になっているといえるでしょう。
最新サーバーOSである「Windows Server 2025」の特徴をあらためて教えてください。
赤井 様々な特徴がありますが(図2)、ハイブリッド運用機能を強化したのが大きな特徴です。Windows Server 2025には 「Azure Arc」のセットアップ用ウィザードが標準搭載されており、クラウドからのオンプミレスのサーバーやAzure をはじめとしたマルチクラウドの環境を統合管理できる環境が整っています※2。Azure Arcを有効化することで、Windows Updateだけでなく、Linuxサーバーのアップデート管理も自動化(Azure Update Manager)できるようになります。これにより、OSが混在する環境においても、Azureポータルから一貫したセキュリティー管理と運用保守を実現可能です。
セキュリティー面では、サーバーを止めずにセキュリティーパッチを当てられる「ホットパッチ」という機能が追加されました。3カ月に一度のリブート以外は、毎月のWindows Update後もリブートなしで運用できます。リブートにかかる工数を現状の3分の1程度に減らせるほか、重要なワークロードを止めることなく、常に安全な環境を維持できます。これもAzure Arcから管理が可能です。
中村 先の調査で、移行前の企業に「移行できていない原因」を訊ねたところ、44.8%と最多になったのが「人手不足」でした。DXでは売上増や生産性向上が主眼となるため、それを実現するためのアプリケーションの構築に多くのリソースやスキルが必要になります。インフラに充てられるリソースは多くありませんが、一方ではWSUS(Windows Server Update Services)も開発が終了し、非推奨にすることが発表されています。このような状況に直面する企業にとって、Azure Arcをはじめとする機能を備えたWindows Server 2025は、多くのメリットをもたらすはずです。
サーバー製品も旧世代よりスペックが大幅に向上
新たな環境を支える最新のハードウエアについても教えてください。
川奈部 デル・テクノロジーズの「PowerEdge」サーバーの最新世代では、CPUやメモリが強化されパフォーマンスが格段に向上しています。主力はデータセンター向けの「Rシリーズ」、コンパクトなタワー型の「Tシリーズ」です。特にRシリーズは、3世代前との比較で処理性能は7倍、電力コストは3分の2、ライセンスコストは3分の1になりました。高集積化によって管理も効率化できます(図3)。
また、Azure Local(旧Azure Stack HCI)認定構成の専用ノード「Dell AX System for Azure Local」も、ハイブリッド環境向けにより最適化されています(図4)。Azureと接続して使うAzure Local環境でも、オンプレミスのHyper-V環境でも利用できるため、まず既存の仮想化環境からHyper-Vへ移行し、その後、Azureへのクラウドシフトを実現するといった段階的運用にも対応可能です。
赤井 マイクロソフトでは、Windows Server 2025 へのアップグレードを強く推奨していますが、Windows Server 2016 の延命を強く希望するユーザー向けに拡張セキュリティー更新(ESU)というプログラムを提供しています。Dell AX System for Azure Localは、その際の基盤としてもご利用いただけると思います。
川奈部 おっしゃる通りです。ひとまず延命して、将来的に、より最適な形に移行していく上でも、適した基盤だと位置付けています。
デル・テクノロジーズならではの強みを教えてください。
川奈部 Dell AX System for Azure LocalはもともとAzure Local向けに設計されたハイパーコンバージドインフラ(HCI)用のサーバーノードで、約10年前からAzureのハイブリッド運用に最適化された検証済みモデルとして提供されています。マイクロソフトとの協業で培った知見やノウハウを注ぎ込むことで、高い信頼性と安定稼働を実現しているほか、サポート力も市場から高く評価されています。このような点をご評価いただき、Dell AX System for Azure Localは日本国内だけでなくグローバルで非常に多くのお客様にご利用いただいています。
移行や運用の効率化を支援するツールも提供
移行を支援するための機能やサービスにはどのようなものがありますか。
赤井 マイクロソフトでは、既存のVMWare vSphere環境からAzureあるいはAzure Localへの移行を考えるお客様向けに移行支援ツールを提供しています。それが「Azure Migrate」です。無償のツールで、オンプレミスで稼働している既存のVMware vSphere環境をAzure環境に容易に移行できます。
さらに、Windows Server 2025用には統合管理ツール「Windows Admin Center」の進化の一環で、「VM Conversion」という新たな拡張機能も提供開始予定です(図5)。これは、オンプレミスで稼働している既存のVMWare vSphere環境をHyper-Vへ移行するためのツールで、現在はパートナーによる稼働検証が完了しています。
これらの機能を活用することで、単なるサーバーOSの移行を超えた、新たな価値をユーザーが享受できるようになりますね。ハードウエアの面ではいかがですか。
川奈部 当社のサーバー製品も、運用を支援する機能を強化しています。それがPowerEdgeサーバーに標準搭載されている「iDRAC(Integrated Dell Remote Access Controller)」ですが、OSが起動していない状態でも、サーバーの電源操作、監視、設定、更新といったライフサイクル全体をリモートから一元的に管理できる機能を備えています。iDRACはより進化を遂げ、最新世代のサーバーでは「iDRAC10」となりました。性能・操作性がより強化され、お客様の運用負荷を大きく削減できることでしょう。
中村 昨今は「自分たちのデータは自分たちでコントロールする」というデータ主権の考え方が広まりつつあります。国や地域ごとの規制に従う必要がある中、オンプレミスとクラウドはもはや二者択一ではなく、相互に移動できるポータビリティや運用性を備えた環境を目指すことが求められると思います。新しいOSや新しいハードウエアを導入することで、それを具現化できると思います。
EOSはビジネス成長の基盤をつくる絶好の機会
最後に、まだ移行に着手できていない企業に向けてメッセージをお願いします。
赤井 Windows Server 2025は進化するハードウエアのポテンシャルをフルに引き出し、Hyper-Vやコンテナ、ハイブリッド環境もより使いやすくなるサーバーOSです。次世代を見据えた信頼性の高いプラットフォームは、ビジネスの成長を支える基盤です。今回のEOSを機に、ぜひWindows Server 2025をベースとする最新ハイブリッド基盤への移行をご検討いただければと思います。
川奈部 何からやればよいか分からない企業は、まず情報収集することが先決です。例えば、総合ディストリビューターのSB C&Sが発信する技術情報ブログ「C&S ENGINEER VOICE」は、中身の濃い有益な情報が多く提供されているメディアの1つです。例えば、Windows Server 2025と最新世代のPowerEdgeサーバーを組み合わせたインフラの構築方法、最新機能の使い方や性能評価なども行っています。BtoB目線で検証まで行っているブログは貴重なので、“失敗しない移行”を実現するためにも、こうした情報に積極的にアクセスしてほしいですね。
中村 とにかく、サーバーOSのセキュリティーパッチ対応を抜け・漏れなく行うことは、セキュリティー対策の一丁目一番地です。無用のビジネスリスクを低減するため、ぜひ忘れずに、社内のすべてのサーバーのOSバージョンを確認してもらいたいと思います。





