資料の紹介

 本書『グローバルシナリオ2040 全産業編』は、2040年の未来に向けて、世界がどのように変化し得るのかを複数の視点から描き出した「未来シナリオ集」である。人工知能(AI)、エネルギー、医療、環境政策、地政学、働き方、宇宙ビジネスなど、40の重要トピックを対象に、専門アナリストが独自のシナリオプランニング手法を用いて、異なる3つの未来像を提示する点が最大の特徴だ。

 提示されるのは、①超知能を巡る国家間競争が激化し、社会の分断が進む「超知能による覇権競争」、②中央集権が弱体化し、地域・都市単位で社会が再編される「生活圏からの再構築」、③環境対応を軸に国際社会が協調しつつも管理的市場が形成される「グリーン資本主義」という3つのシナリオである。これらは単なる未来予測ではなく、「異なる前提条件のもとで世界がどう変わるか」を示す複数の可能性である。企業にとっては戦略のロバストネス(頑健性)を高めるための重要な思考ツールとなる。

 本書の価値は、未来像の提示にとどまらない。各シナリオは同じ40トピックで構成されているため、異なる未来間で同じトピックを比較でき、自社の戦略の強みや弱点を明確にしやすい。また、シナリオ構築のベースとなる独自手法で用いる「問い」や確実性の高いトレンド分析など、意思決定の精度を高めるための洞察も豊富に提供されている。

 さらに本書では付録として123枚のシナリオカードを提供し、カードを活用したワークショップの実践方法を詳しく解説している。異なる未来を疑似体験する「異世界体験」、戦略上のリスクを洗い出す「脅威確認」、新たな市場機会を創出する「有望市場案出」など、実務に直結するフレームワークを体系化している点も実用的だ。

 著者が強調するのは、「未来は予測できない」という前提に立つことの重要性である。不確実性が高まる現代においては、単一の未来に依拠した計画ではなく、複数の可能性に備える構えが求められる。本書は、そのための思考の地図であり、企業経営や新規事業開発、研究開発に携わる人々が意思決定の質を高める強力な羅針盤となるだろう。2040年を見据え、自社の成長機会を再定義したいビジネスパーソンにとって必読の1冊である。

-----『グローバルシナリオ2040 全産業編』で取り上げる未来シナリオの主な論点や方法論

▼技術による変化:未来を規定するコア技術の進化と社会実装のシナリオ

  • AIの進化が経済成長と安全保障の中核となり、国家主導の超知能競争が進展
  • 量子技術やIoT、ロボティクス、バイオ技術などが複合的に発展し、産業構造を再編
  • データ駆動型の統治や監視社会の進行と、プライバシーや自由とのトレードオフ
  • 分散型エネルギー(マイクログリッド)や地域インフラの自立化技術の普及
  • グリーン資本主義における認証や検証可能性を前提としたデジタル社会
  • 人間の能力拡張や医療技術の進展による健康や寿命、労働の再定義

▼業界構造の変化:分断・再編・集中が進むグローバル産業構造の新秩序

  • 国家資本主義と巨大プラットフォームによる寡占化
  • グローバル市場のブロック化と標準・制度の非互換による分断
  • 中央集権から地域分散型経済への移行、ローカル経済や協同組織の台頭
  • グリーン政策と規制による「条件付き資本主義」の定着
  • 大企業によるコンプライアンス吸収と市場支配、中小企業の従属構造
  • 実体経済やインフラ投資回帰による産業構造の再バランス

▼ビジネス領域の拡張:不確実性を機会に変える新市場創出と戦略思考の実践

  • AIや環境、都市、宇宙など複数分野横断での新市場機会の特定
  • 「脅威」を「機会」に転換する思考フレームによる戦略創出
  • 未来の生活像から逆算するバックキャスティング型の事業設計
  • 複数シナリオ比較による戦略の強靭性(レジリエンス)の向上
  • 日本企業が競争優位を発揮できる領域の再定義とイノベーション機会の提示

(※下部より全目次と抜粋版をダウンロードできます)

著者:未来舎/A4判、324ページ/2026年2月27日発行/発行:日経BP
著者:未来舎/A4判、324ページ/2026年2月27日発行/発行:日経BP

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